コロナで五輪開催が危うくなっていた20年3月、組織委理事の治之はWSJで延期論をぶち上げた。それから数カ月――。彼は赤坂の老舗料亭で、森喜朗らと向き合っていた。
新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年。感染拡大により、4月7日から順次発令されていた緊急事態宣言が全面解除されたのは5月25日のことだった。営業自粛を余儀なくされていた飲食店も、酒類の提供時間が夜10時まで延び、本格的な再開に向けて動き始めていた。
「冗談じゃないですよ! 何で僕が辞めなきゃいけないんですか」
繁華街の喧騒から離れた場所にある東京・赤坂の料亭「佐藤」に、その怒号が響き渡ったのは、それから程なくしてのことだった。この日、東京五輪の組織委員会の会長、森喜朗や理事の高橋治之らが密かに集まり、会合の席が設けられていた。森がIOC会長のトーマス・バッハの意向を受けて、治之に理事を辞任するよう求めると、治之は机を叩いて、こう怒りを露わにしたのだ――。
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source : 週刊文春 2024年7月18日号