難病の子どもの夢を実現させる非営利団体「メイク・ア・ウィッシュ」の“伝道師”として30年間、3000人の夢に寄り添ってきた大野寿子さん(73)。がんで余命1カ月と宣告されたのは、今年6月26日のことだった。それでも彼女は最期のプロジェクトに挑む――。
![](https://bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/8/5/1600wm/img_850b523b3f4e7a250136262efbb326c5304546.jpg)
細くなった腕を伸ばしてマイクを握ると、大野寿子はこう切り出した。
「すっごい楽しみにして、ここに来ました」
顔にははち切れんばかりの笑みが浮かんでいる。
白いシャツに青のカーディガンをはおり、黒いロングスカート。髪は若い頃からショートで、最近は染めなくなったため、輝くようなグレイヘアである。
7月6日。神戸・三宮近くのキリスト教施設には約60人の聴衆が詰めかけた。「夢に向かって一緒に走ろう」と題した講演だった。
笑みには理由があった。大野は末期の肝内胆管がんで、6月末には医師から「余命は1カ月ほど」と宣告されている。来られるかどうか最後まで不安だったのだ。実際、体重はかつての50キロから40キロに減り、157.5センチの身長にしてはかなり細い。衰弱は確実に進んでいる。
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source : 週刊文春 2024年7月25日号