ABEMAで作る番組はすべて、「トンガリスト会議」という名の会議の場で、企画を思いついたスタッフが総合プロデューサーである私に提案し、その場で可否を判断するという形をとってきた。トンガリストとは、とんがったとか尖ったとかそういう意味で、事業パートナーのテレビ朝日社内にあった「フリキリスト賞」に倣ったものである。我々は、通常の枠を超えた、ふりきった、とんがった番組企画を追い求めてきた。
なぜなら2016年に開局したABEMAは、当初は無名で、視聴者がわざわざ探して来るほど興味をそそる番組、ABEMAの名前を広く世間に知らしめてくれる話題性、ニュース性を必要としていた。それはもう、生き残るために必死だったと言っていいくらいだ。普通の番組をやったところで、新しいインターネットテレビは相手にされない。誰よりもこの事業を成功させたい社長の私が大号令を掛け、誰もが見たくなる、または誰も見たことのない企画を血眼になって探し求めていたのだ。
開局から半年が経ったある日、トンガリスト会議で、テレ朝から出向中の優秀なプロデューサーが自信ありげな顔で、「亀田興毅を倒したら1000万円」とだけ書かれた1枚の紙をペラッと私の目の前に置いた。
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source : 週刊文春 2024年8月1日号