ゴシックホラー、モダンホラー、スプラッタ、心霊オカルトなど、ホラーにはさまざまな種類がありますが、個人的には実話や体験談が好みです。「怪談」ですね。リアリティがあればあるほど、おぞましければおぞましいほど好きで、なるべく信憑性のパーセンテージが高いものを選んで楽しんでいます。
そんな僕が、世の中にホラーというジャンルが存在することを知る前の幼少期に、まるで心霊体験のように偶発的に遭遇してしまった作品が『ねがい』(楳図かずお)です。『漂流教室』の単行本11巻(最終巻)に収録されており、僕は小学生のとき、放課後の学童教室で読みました。子供の頃に愛着を持ったものに名前をつけて「ごっこ遊び」をすることは誰しも経験があるでしょうし、学童教室という日常のなかで出会ってしまったからこその怖さもあり、すごく感情移入して読みました。最後に少年が人形を泣きながら破壊するシーンは切なかったです。一見するとハートフルな題材をホラーへと昇華させるのは、楳図先生のストーリーテリングが上手いからですね。日常の中で出会った、いわばトラウマ漫画です。
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source : 週刊文春 2024年8月15日・22日号