7月27日、本の追加発注分がついに届く。その3日前、大野さんを訪れたのは今年1月に亡くなった吉村和馬さんの家族だった。
待ちに待った約2000冊の本が届いたのは7月27日の午後だった。大野寿子が肝内胆管がんで余命1カ月と宣告されたのが6月26日。医師の見立て通りなら、自身で受け取ることはかなわなかった。
「命がつながり、ほっとしています」
届いた本は自著『メイク・ア・ウィッシュ 夢の実現が人生を変えた』である。大野は難病の子の夢をかなえる公益財団法人「メイク・ア・ウィッシュ」日本支部(MAWJ)の事務局長を18年間、務めた。そこで見聞きした子どもの奮闘や家族の悩み、喜びを紹介している。
すでに絶版になっていた。「最期の大野プロジェクト」として、希望者に自費で届けようと500冊を刷り直した。この分はすでに発送済みだ。その後、プロジェクトを知った人から注文が相次いだ。2500冊を追加発注したが、版元の都合で搬入が遅れた。
楽しみにしてくれている人たちの気持ちと命の残り時間。それを考え、「とにかく早く」と願っていた本である。この日、大野の自宅(千葉県)に届いたのは、追加発注したうちの約2000冊、段ボール箱で58個だ。
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source : 週刊文春 2024年8月15日・22日号