がんの診断から約半年がたち、「1カ月程度」と言われた余命期間も過ぎた8月上旬。大野さんは自分の気持ちの変化に気付いた。
「尾籠な話なんだけど」
8月に入ってすぐだった。大野寿子は自宅(千葉県)で介護用ベッドに横になり、天井を見ながらとつとつと語り始めた。
「以前、お漏らしをしたことが3回、あるんです。ショックでね」
末期の肝内胆管がんと診断されたのは今年2月だ。抗がん剤治療に入ると、おなかの調子が悪く、自宅で粗相をする。後片付けをしながら涙がこぼれた。
「症状が悪化したら、自分で始末も難しくなる。あっちゃん(夫の朝男)にこういう掃除までさせるのかと思うと、情けなくてね」
「元気印」を自称した大野は、いずれ一人でトイレに行けなくなるという状況が受け入れられなかった。
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source : 週刊文春 2024年8月29日号