2009年、逮捕された木嶋佳苗の周囲では、不審な死が相次いでいた。世を騒がす婚活詐欺事件は、すぐに殺人事件へと切り替わる。司法の場で何が起こっていたのか――。

「佳苗ちゃんが高校生の頃だった。木嶋家に招かれて食事をしました。4人きょうだいの中で、佳苗ちゃんだけが違う。見た目も。持っている雰囲気も。ひとりだけお父さん似だったし。佳苗ちゃんは、どこか遠くを見ているような、ふわーとした眼をしてた。夢を見ているような眼。そして、ちょっと周りを冷めた目で見下してもいた。すべて、今から思えばだけれど」(高校生時代を知る別海町の女性)

 護送される時、木嶋が興奮して顔を上気させていくのがわかったと、ある捜査関係者は言う。目が爛々と輝き、自分がどれだけ注目されているのか、集まってきたカメラマンたちの姿を見て、満足している。そんな印象を受けた、と――。

 木嶋佳苗は2009年9月に千葉県野田市で逮捕された。初めは詐欺容疑だった。その後、翌年2月に、殺人容疑で再逮捕となる。

 2009年8月6日、埼玉県内の月極駐車場に置かれたレンタカー内の後部座席で、その男性の死体は発見された。助手席の足下にはコンロがあり練炭が焚かれていた。死因は一酸化炭素中毒。練炭自殺を図ったように見えた。だが、車の鍵が発見されない等、不自然な点が多すぎた。

 男性の名前は東京都千代田区に住む尾山保二(仮名、当時41歳)だと、すぐに判明した。最近、マッチングサイトで知り合った女性と結婚することが決まり、8月5日に彼女と旅行に出かけた。その翌日のことだった。直前まで一緒にいた女の名は木嶋佳苗34歳(当時)。

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source : 週刊文春 2024年8月29日号