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行き詰まる40代50代 どうすればモチベーションを維持しながら生きられるのか

宮坂学×角幡唯介 #2

note

新しい会社を立ち上げるためのモチベーションとは?

角幡 でもそんな中で、新しい会社を立ち上げて新しいことをやるっていうのは、どうやってモチベーションを上げていくんですか。

宮坂 例えば富士山だったら、バスで行って5合目から登る人が多いですが、一方でいまだに田子の浦から登る人もいるらしいんですよね。

ヤフー役員フロアの入り口

角幡 そうなんですか。

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宮坂 それはスタイルの違いだと思うんですけど、私はどちらかというと、そういう田子の浦から5合目ぐらいまで行くのが一番好きで、頂上が見えてくると、とりあえず最後までは行くけど、飽きてきちゃうかもな〜という感じです。いつも、振り返ってみると、0合目から真ん中ぐらいまでのところをやるのが、すごく好きなんですよね。

 ゼロを1にするということを、決してやり遂げたわけではないんですが、やっぱりよくわからない状況の中で試行錯誤やっているのが好きなんです。まさに20年前のインターネットの世界で、私自身の感覚としては海から登り始めているタイミングの時、「世界で一番でかい山になる」と思って登っていたんですよね。周りの人は「高尾山くらいでしょ」という印象みたいでしたけど(笑)。

 

角幡 ハハハ。

宮坂 まだ、霧がかかっているような状況なんですよ。私は「ものすごい上まで行くから」と思って登っているんですけど、一部の人は「低いよこの山」って言うわけですよ。でも仕方ないのでどんどん進む。それでまあ、私は20年登り続けてきたので、「ブロックチェーン」や「MaaS」といったちょっと違う山に登り始めているところです。

――自分の身に置き換えて考えると、やはりリスクがあるようにも思います。

宮坂 仕事の質が変わると、会う人が変わるんですよ。今まで会わなかった人と会うことが、すごく楽しいです。

角幡 僕がたまに思うのは、開拓って面白そうだなと思うんです。文字通り、「北の国から」の世界みたいなことです。僕、実家が北海道ですから、土地を買って。

宮坂 いいじゃないですか。

角幡 北海道の山の中の安い土地を買って、小屋を建てる。

宮坂 絶対いいですよ、それ。

角幡 それで『開拓記』でも書こうかなとか(笑)。

宮坂 私も、白馬でちょっと開拓をやっているんですよ。

 

角幡 そうなんですか?

宮坂 開拓と言うと大袈裟ですけど、もう亡くなった親父の家があって、周りの田んぼや畑が耕作放棄地になり始めたので、隣のおばあちゃんに「面倒みて」と言われて。結局、農業法人のおじさんと友達になって任せたんですけど。折角だから、木を植えたり、田んぼの胸壁をコンクリートから石垣に組み替えたりしています。ユンボを借りてきて川作ったり(笑)。完全に大人の砂遊びですね。

角幡 僕、50もとうに過ぎて、そのうち体が動かなくなった頃には、開拓の方が面白いんじゃないかなと。自分で木を伐採して小屋を作って。「俺も好きなこと、やらせてくれ」って。

宮坂 角幡さんはすでに十分、やっているじゃないですか(笑)。

写真=榎本麻美/文藝春秋

極夜行

角幡 唯介

文藝春秋

2018年2月9日 発売

みやさか・まなぶ 1967年生まれ、山口県出身。同志社大学経済学部卒。ベンチャー企業を経て1997年に設立2年目のヤフー株式会社に転職。2012年6月より同社社長に就任し、PCへの依存が大きかった事業のスマホシフトを実現させた。2018年6月、ヤフー新執行体制移行のため代表権のない会長に退き、現在はヤフーの100%子会社であるZコーポレーションの代表取締役社長を担う。

 

かくはた・ゆうすけ 1976(昭和51)年生まれ、北海道芦別市出身。早稲田大学政治経済学部卒。同大学探検部OB。03年に朝日新聞社に入社。08年に退社後、ネパール雪男探検隊に参加する。『空白の五マイル』『雪男は向こうからやって来た』『アグルーカの行方』『極夜行』等著書多数。

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