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春日太一とジェーン・スーが語る「デートにふさわしい映画」と「東京のもてない街」

春日太一 ×ジェーン・スー『泥沼スクリーン』対談

note

春日 あー、そうですね。

スー 男性も「女の子の友情ってあんな感じなの?」とか、映画のあとも話しやすいんじゃないかな。女性も「私が学生だったときはー」って語れるし。「サニー」は初デートのためにずーっと上映しておいたほうがいい。

春日 シネコンの1番小さいスクリーンをたえず確保しておいて、座席もカップルシートみたくして。ただ、われわれの青春時代、90年代だと「サニー」みたいなちょうどいい映画ってないじゃないですか。何があのころの正解だったんだろうっていまだに思うんですよ。

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「サニー」がまだなかった90年代の正解

スー 「ボディガード」とか?

春日 「ボディガード」か。「レオン」はもうちょっと後ですかね。

スー 「レオン」は危険でしょう。

春日 僕が行ったときはカップルだらけの中、ひとり学生服だったっていう記憶があります。

スー 「レオン」は映画が終わったあと男の子がちょっと気取って背中を丸めて映画館から出てきたりしたら、うわ! ってなるかも。

春日 こいつジャン・レノぶってるな、みたいな感じですね。

スー あと自分がオカッパだったら、ナタリー・ポートマン意識してると思われてないかな?! と情緒不安定に。

春日 それも気まずいですね。

スー 「レオン」は危険。「ボディガード」が楽しめるカップルは末永く幸せになるような気がする。

春日 ただ、「ボディガード」を当時デートで観たところで、女の子が感動して泣いたりしたら、逆にこっちが冷めちゃうみたいなところがたぶんあったと思うんです。今は違いますよ。今は「ボディガード」観て泣くような女性のほうがよかったりするわけですけど。当時は尖ってましたからね……。あと、あのころは自分の女性に対するプレゼンテーションを間違っていた。映画に詳しいというのを売りにしていたせいで、デートに行くとなった時に女性は映画に行こうって言うんですよ。

スー そうなりますよね。

部屋で彼女と映画を観るなら?

春日 あと、高校時代にそんな仲良くない同級生にデート映画を聞かれたことがあったんです。明日、彼女が部屋にくるからビデオ借りて一緒に観たいんだ、で、春日映画詳しいだろ、って。この大喜利もなかなかややこしくて。こっちは「ゴケミドロ」とか見ていた時代ですからね。そんなもん何にも浮かんでこないんですよ。で、笑える映画がいいと言うから、1番笑えると思ってすすめたのが「サボテン・ブラザース」。

スー あー。恋愛において万人受けするタイプの映画ではないかもしれない。

春日 月曜日の朝、そいつがきて、いきなり殴られそうになって。ぜんぜん盛り上がらなかったぞこの野郎って。

スー 「サボテン・ブラザース」を観てゲラゲラ笑ったとしても、そのあといいムードにはならないかも……。

春日 そうですね。女の子の立場だったら、彼氏が家で「サボテン・ブラザース」持って待ち受けていたら、それはもてない側のフィールドに入れられちゃうってことですもんね。今ならわかるんですよ、答えが。「恋人たちの予感」を紹介すればよかったなって。あれ笑えますしね。ロマンチックな気分にもなりますし。