昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

山本 一郎
2017/04/06

お前らの賃金は上がらないのに「完全雇用」で人手不足の日本

女性、高齢者が赤紙総動員 安全な経済的転び方はあるのか

 よく「何とかの若者離れ」っていうじゃないですか。バイクや釣りのような趣味から、伝統芸能や工場熟練工の現場まで、募集したって人が集まらないとかいう各種「守るべきもの」の数々。流行りすたりはありますよね、というレベルに留まらず、すべての面において後継者不足、人手不足は以前から問題になっておったわけであります。

©iStock.com

 経済学者であれば、賃金が支払われない魅力的ではない現場に人は集まらない、効用が低いから見捨てられた領域なんだよ黙って滅べ馬鹿どもめ、と煽ってきそうな話です。だけど、例えば44歳の私が子供のころは「水泳と自転車とスキーができないのは親の責任」と言われて育って、やりたくもないスキーをやりに寒いところへ親に連れていかれてスキースクールに放り込まれた経験があります。なんでわざわざ冷たい雪の中を派手なウェア着てずるずるとボーゲンで麓まで降りてくるのに金を払わなければならないのでしょう。理不尽だ。世の中は理不尽だよ。でもね、いざ親になってみて、じゃあ山本家も子供たちにスキーぐらいはやらせようとスキー場に連れて行ってみるとガラガラ。誰も乗ってないリフトがむなしく山頂まで登っていきます。スキーリゾート地自体も、スキー場よりも露天温泉のほうが混んでるという始末です。スキー離れっていうレベルじゃねえぞ。自分の若いころの記憶ではスキーリフトは並ぶものという常識を覆すような少子高齢化とかいう以前に、ウィンタースポーツの楽しみ方もかなり変化してきているということなんでしょう。

©iStock.com

地方都市の賃金と物価

 仕事や観光で地方都市にいくと、その地域ではどんな求人が出ているのかを調べるのが楽しみのひとつなんですけど、短期のリゾートバイトの給料が時給900円なのに対し、それ以外の求人は最低賃金に近い760円のものばかりが乱舞している状況でした。少しでも稼げれば時間を金に換えたらいいんじゃないのと言わんばかりの値段です。近くにある農業法人の時給も900円ぐらいで、通年採用の場合、暇な時期は760円と、まあ大変な感じですよ。都市生活の食は、こういう労働によって支えられているのかと思うと申し訳ない気分になります。

 それでいて、地方暮らしの物価はそれほど安くもない。安いのは家賃と地産の品々ぐらいでしょうか。そりゃあ地方暮らしの人たちの生活が厳しいのも分かります。せめて地方に観光に出たときぐらいはその地方にお金を落としていくのが礼儀だと思って地元の商店でモノを買うんですけど、観光地の土産物屋でもないのにそこまで安くはないんですよね。レンタカー借りてロードサイドのショッピングモールにも足を向けると、そこはもうどの地方にもあるような画一化されたイオンの世界。みんなの週末をおなか一杯に吸い込める娯楽が所狭しと並んでいるけど、最終的に一番混んでいるのは安飯を提供するフードコートという状態に涙するわけであります。

はてなブックマークに追加