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ロボットが人間の仕事の半分を奪う時代、どんな人生を望むのか

――ベーシックインカムで自由な時間が持てるようになったとして、どのぐらいの人が自分の望む人生を生きていけるのでしょうか。

 

ブレグマン: ぜひ一度オランダに来てください(笑)。ベーシックインカムの導入はまだですが、オランダの週当たりの労働時間は世界でも一、二を争うほど短く、それでいて1人当たりの生産性は日本より高いです。多くを成し遂げたいなら、働く時間を減らすべきです。週に70時間も80時間も働いていては効率が落ちますし、家に帰ったら疲れ果てて、テレビを見る以上のことはできないでしょう。

  国際比較をすると、週当たりの労働時間が少ない国のほうが、子供や高齢者に向き合う時間が多く、社会資本も豊かです。民主主義も活発ですし、地域コミュニティに参加する時間も確保できています。

 働くことは人生の一部に過ぎません。とりわけ、今後20年から30年の間にロボットが仕事の50%を奪うという予測がなされている今、自分は人生で本当に何がしたいのか、真剣に考える時間を持つ必要があると思います。

 

今は、ユートピアとディストピアの“分かれ道”

――ベーシックインカムの導入までには、どんな課題や困難があるでしょうか。

ブレグマン: 一つ言えるのは、この先20年を無為に過ごせば、多くの人は自分のしてきた仕事をただ失うだけだということです。考えること、実験することを、今始めなければなりません。ロボットが私たちの代わりに働き、人間は自分自身が大事と思えることにもっと時間を割けるユートピアが実現するのか。それとも、少数の超エリートや大金持ちがロボットを駆使し、残り99%の人々は彼ら少数の人々の下僕になるディストピアが到来するのか。

 今、思い起こすべきなのは、テクノロジーは運命ではなく可能性だということです。どんな未来に生きるかを、私たちは自ら選ばなければなりません。

構成/川口昌人

隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働

ルトガー・ブレグマン(著),野中 香方子(翻訳)

文藝春秋
2017年5月25日 発売

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