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“胸の大きさ、垂れ具合、毛の濃さ…” デリヘルに来る老人の好みは、なぜ“細かい”のか

東海林さだおさん×田原総一朗さん対談「好奇心と性が僕らの原動力」より#1

source : オール讀物 2020年11月号

genre : エンタメ, 読書, 働き方, 社会, ライフスタイル, ヘルス

note

ITや飲食チェーンの経営者のサイドビジネス

田原 お客さんのなかには、サイトを見てもなかなか女性を決めることができず、お店の人と電話で一時間以上相談する方がいるそうです。

東海林 高齢者が安心して利用できるように、店側も工夫しているのですね。

田原 僕が取材していてびっくりしたのは、最近のデリヘルって、ITや飲食チェーンの経営者がサイドビジネスとして、やっていることが多いんだそうです。

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東海林 へえ、なぜそういった人々が参入してくるのですか。

田原 今の風俗店は、従来の店舗型と違って派遣型ですから、いかに女性をスムーズに目的地まで派遣できるかが大事。そこで重要になってくるのが、道路状況や、どこのホテルに空きがあるかなどの“情報”。デリヘルを経営するには、それらを管理するシステムが必要なんです。IT出身者はそれを自前で作ることができますし、飲食チェーンならすでにあるデリバリーのシステムを応用することができます。

 

今では女性も安心して応募できる

東海林 田原さんは、デリヘルで働く女性たちにも取材をされています。皆さんとても真面目というか、正直僕のイメージしていた“デリヘル嬢”とは全然違いました。昼間は普通にOLとして働いている女性や、良い大学に通っている女子大生とか、家庭の主婦とか。

田原 『セックス・ウォーズ 飽食時代の性』の執筆のために風俗の取材をしたのは1980年代ですが、あの頃と今では明らかに女性の質が変化していました。昔はスカウトマンが街なかで女性に声をかけたり、嘘の求人情報を載せて募集をかけたり、騙すような形で女性を集めて、ムリヤリ風俗で働かせていた。しかし今や、女性たちの方から応募してくるので、店側が無理をして女性を集める必要がないといいます。

東海林 経営がしっかりしていると、女性も安心して応募できるということなのでしょうか。

 

デリヘルで“生きがい”

田原 それともうひとつ、今の若い女性たちは「あと月5万あれば、10万あれば」と切実に感じています。他の仕事でその額を稼ごうと思ったら、時間も取られるし大変です。しかしデリヘルなら、自分の空いた時間で効率よく稼げるというわけです。

東海林 大体どのくらいの収入になるのですか。

田原 月5万円稼ぐには、月5回、移動時間含め8時間程度の労働になるそうです。

東海林 女性のなかには、「人の役に立っている」と感じる人や、この仕事を通じて「生きがいを感じる」と答えている人もいて、驚きました。

田原 お客さんから「君のおかげで、生きているっていう感じがあるんだ」と言われて、とても嬉しかったと話してくれた女性もいましたね。

東海林 老人が言うのは分かりますが……、女性の側から「生きがい」という言葉が出てきたのは、かなり衝撃的でした。しかし、うーん……これは本音なんですかね? どうも美談に聞こえるというか、信用しきれない(笑)。

田原 かなりの部分、本音だと思いますよ。