部屋に戻って主人は、オーナーさんの言う通り、アプリの誤作動と変な夢がたまたま重なっただけかも知れない。もう忘れようと、アプリの音声を消しました。
確かにそうかも知れませんが、正直私は納得いきませんでした。しかし、変な住人という噂でも立てば、生活しづらくなるかも知れないと、その時は無理矢理納得したのです。
ふたたび鳴り響くインターフォン
次の日の朝、私も主人も特に変わった夢も見ませんでした。そして日課のいびきアプリを再生しても、しゃっくりのような声は入っていませんでした。
安心していると突然、ピンポーン、ピンポーンとインターフォンが鳴りました。
「こんな朝早くに誰だろう」主人が玄関まで行って、扉を開けました。
するとそこには、オーナーさんが居られました。
「朝早くにすみません。今から私の部屋で、三木住職にお経を挙げて貰うのですが、一緒に来られませんか」
そうおっしゃったので、今こちらにいるのです。
* * *
ご夫婦からこのお話を聞かせていただいたのは、マンションのオーナー様の部屋でした。
朝早くにオーナー様からお寺に電話があり、直ぐに来て欲しいとのことでしたので、駆けつけたところ、ご夫婦も一緒に居られたのです。
お話の中で、オーナー様は、あまり霊的な事を信じられないご様子でしたが、なぜ私を朝から呼んだのか、この疑問は、ご夫婦もお持ちでした。
「オーナー様は、何故こんな朝早くに私を呼ばれたのですか」
そうお聞きすると
「実は、昨夜の話なんですがね……」そう言って、気まずそうに話しはじめました。
オーナーが語った「恐怖体験」
昨日、ご夫婦が私の部屋に、しゃっくり男の話をしに来られました。私は正直、その手の話は全く信じていませんので、おかしな夫婦だと思いました。
しかし、その晩の事でした。
決まって私は晩酌をしながらテレビを見るのです。そして、ついつい面白い番組がありましたので、深夜1時頃までテレビを見ていました。
番組も終わりテレビも電気も消して、寝室へと向かいました。
寝室の扉を開けると、真っ暗な部屋の中で、廊下から漏れる明かりを頼りにベッドまで行こうとしたその時に、気が付いたのです。私のベッドに誰かが寝ているんです。
私は驚いて、部屋を出ると、ゆっくりと扉を閉めました。そして、警察に電話をしようと思ったんです。