京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。
そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『続々・怪談和尚の京都怪奇譚』(文春文庫)より、背筋も凍る「しゃっくり」を特別公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わる……のかもしれない。
◆◆◆
このお話は、ある新婚のご夫婦からお聞きしたことです。
お二人は、新居としてマンションを買われました。
引っ越しの荷物が入った段ボールも、まだ半分くらいしか荷ほどきが出来ていない頃のことですが、と奥様は前置きして話し始めました。
深夜の訪問者
「深夜、寝室で寝ていると、突然インターフォンが鳴ったんです」
「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン」
突然、鳴り響いた音に驚いて私は目が覚めました。主人は、隣でぐっすり寝ています。時計に目をやると、深夜1時頃でした。
「こんな時間に誰が?」
主人を起こそうかとも思いましたが、明日も仕事があるので起こすのは可哀想だと思って、起こしませんでした。
そんな事を考えている間にも、ピンポーン、ピンポーンとインターフォンは鳴り続けます。
知人にはまだ新居の住所も教えていないし、ましてやこんな時間に訪れる知り合いなどは思い当たりません。
こみ上げてくる恐怖心を抑えて玄関ドアの前まで行き、ドアスコープを覗いてみました。
するとそこには、痩せ細った体を少し傾けた寝間着姿の男性が一人立っていました。
「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン」
その男性は、無表情にただインターフォンを押し続けています。