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何食わぬ顔のおじさん 凍りついたように動けず口もきけない私
どれぐらいの時間がたったのでしょうか。
「ただいま一」
お風呂から上がった母が、タオルで髪を拭きながらリビングに戻り、私の両脚は魔の触手からスッと解放されました。
何も知らない母は、「お湯がさめんうちに、あんたも入り」とおじさんに声をかけ、おじさんも「ああ、そうしよか」と返事して、笑っていました。
いつも通り、何事もなかったように。
何食わぬ顔で。
私は凍りついたように、こたつから動くことができず、口もきけない状態でした。
凶暴な力に両足首を押さえつけられている感覚が、なぜかジンジンと続いています。
この恐怖。
この気持ち悪さ。
この嫌悪感。
息が、息が苦しい。
ショートパンツの裾が、下着ごとグシャグシャに乱れたままなのを知らないのは、ママだけや。
私をこんなんしたんは、ママの目の前にいる、おじさんやで。
なあママ、気付いて。気付いてよ。
今、すごく怖いよ。
動けないよ。
お父さん、お兄ちゃん。
戻ってきてよ!!
懸命に心で叫んだけれど、母に届くことは、ありませんでした。(#2に続く)