閉じている脚の間に、割って入ろうとしている何か
同じこたつを挟んで向かい合い、おじさんはお笑い番組を観ていました。
ピンクのパーカーとお揃いのショートパンツというゆるい部屋着の私は、こたつ布団から上半身を出し、仰向けに寝転んで携帯ゲームに熱中していた、その時です。
……なに? なにコレ?
こたつの中で閉じている脚の間に、割って入ろうとしている、何か。
それが、おじさんの足の指であると理解するのに数秒かかりました。
な、なにやってるん?
もしかして、私の脚が邪魔なんかな?
そう思って脚を少し開きかけた瞬間、有無を言わせぬ凶暴な力を伴って、おじさんのがっちりした硬い足指がねじ込まれ、ショートパンツ越しの陰部に触れたのです。
……ッ!!!!
反射的に脚を閉じようとした私の足首はあつけなくおじさんの両の手に摑まれ、ガバッと大きく広げられました。
そのまま、無骨な足指が気味悪い生き物の触手のようにうごめき、私の陰部を這い回ります。クネクネとこねくり回したかと思うと、強引に押し込まれて、
なに? なにしてるん?
茫然と天井を見つめる私の体の中心部を、触手は容赦なくなぶり続けます。
誰も観ていないテレビから、芸人さんの弾丸トークと観客の大爆笑が延々流れ、そこに重なるハァ、ハァと乱れた息づかい。
なんで——、
なんで、そんなことするん?
「お母さん、お父さん、お兄ちゃん——助けて」
混乱した脳裏に、裸の男女が重なり合う姿がぼんやりと再生されました。
いつかテレビで観た、大人同士のなんだか秘密めいた……あの場面? あれなん?
『特命係長只野仁』のワンシーンが胃の底からせり上がってきます。
おかしい。
こんなん、絶対おかしい。
あれはもっとロマンチックなもんやった。
なんでこたつで、おじさんにこんなんされなアカンねん……。
気持ち悪い!
やめて……やめてやめてやめて!!
お母さん、お父さん、お兄ちゃん——助けて!!
助けてよ!!
なのに、どんなに叫ぼうとしても、声に出せません。
テレビから弾ける観客の大爆笑が、私の耳をうつろに過ぎていきました。