中学2年生で家出、温泉街のコンパニオン、ヤクザによる監禁を経験……2度の服役を経験したが、今では建設請負会社社長として更生した異色の経営者・廣瀬伸恵(ひろせ・のぶえ)さんの壮絶な人生をお届け。
第1回では、ヤクザに監禁・シャブ漬けにされた少女時代のエピソードを、ノンフィクション作家の北尾トロ氏による新刊『人生上等! 未来なら変えられる』より一部抜粋して紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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覚せい剤と好奇心
たまり場となった廣瀬の家には女の子がたくさんいた。それを目当てに男たちの出入りも盛んになる。そんな場所はなかなかないから、近郊の町から遠征してくる男連中も現れる。
その中に県外だが距離の近い茨城県古河(こが)市からの遠征組がいて、近いうちに俺たちの地元へこいと誘われた。彼らは古河一中、二中の生徒たち。中学生なのになぜか車を乗りまわしていたりする。そんな中学生は地元の栃木にはいなかったので、「こいつらすげぇな」と驚いた。
すでにイケイケのヤンキーになっていた廣瀬が断るはずもなかった。それどころか、帰るところのないスズを連れてホイホイ乗り込む。家に不良が集まってシンナーを吸っているのを父に見られたため、新しい場所が必要だった。こんな家、たまり場に使えないならいる意味がない、出ていってやると家出したのだ。
教えられた住所を尋ねると、そこは一軒家。家出してきたと告げると古河の不良が言う。
「ここ、おまえら住んでいいよ」
こうして家の持ち主も知らないままスズと暮らすことになるのだが、そこは地元の不良たちのたまり場でもある。まともな生活になるはずがない。
「うん。覚せい剤をおぼえてしまった」
え? まだ中学……。
「3年ですね」
15歳で早くもヤンキーの範疇(はんちゅう)を超えてきた。共に取材しているカメラマンのカンゴローは絶句している。
「その一軒家には暴力団とかいろんな大人がやってきて、好きに使っていいと小遣いをくれたりする。覚せい剤をやってる子もいて、打ってみるかと誘われたの」
シメ会やシンナーとはレベルの違うヤバさ。さすがの廣瀬も躊躇し、やんわり断わったりしたが相手はプロ。いつまでもそうしてはいられない雰囲気を作られてしまった。