きょう3月12日は、モスバーガーを展開する株式会社モスフードサービスが決めた「モスの日」だ。1972(昭和47)年のこの日、東武東上線の成増駅前(東京都板橋区)にモスバーガー最初の店舗となる「実験店」がオープンした。そこはショッピングセンターの地階のわずか2.8坪のスペースだった。創業者の櫻田慧(35歳)・吉野祥(29歳)・渡邊和男(28歳=年齢はいずれも当時)はもともと大手証券会社の同僚で、退職後、皮革問屋勤務を経て起業し、靴やバッグの移動販売をしていた。だが、前年のマクドナルドの日本1号店のオープンに「これからはハンバーガーの時代が来る」と触発され、本場アメリカへの視察、日本人の嗜好に合ったソースづくりなど準備を重ね、ついに開店を迎える。

創業者・櫻田慧 ©共同通信社

 しかし、開店初日と2日目こそ売れ行きは好調だったが、3日目には急落する。翌月には商業ビル・中野ブロードウェイ(東京都中野区)の2階にも出店するが、ここもうまくいかない。結局、実験店2店舗は数ヵ月で閉店。この間、新たな店舗として、道路に面して、営業時間も自由にできる独立した物件を求めるうち、成増商店街の入口にある八百屋の倉庫を見つけた。倉庫は八百屋が使っており、最初は断られたが、借りられるまで何十日と通い、無償で店を手伝って誠意を示し、ついに主人から許しを得る。こうして72年6月21日、モスバーガーの正式な1号店となる成増店がオープンし、7月にはモスフードサービス(当初の商号の表記はモス・フード・サービス)が設立された。

 開店当初の主な客は中高生で、学校のことなどで相談に乗るなど親密な関係を築いた。学生たちは自主的にチラシを配って店の宣伝もしてくれ、ここから、のちにモスバーガーチェーンの原則となる「地域密着のスタイル」が培われていく。一方で、早い段階でフランチャイズ(FC)制を始め、翌73年には名古屋にFC1号店がオープン。その後も着実に店舗を拡大し、86年には外食業界初の47都道府県への出店を達成するまでにいたった(『モスのココロ モスバーガーハートフルブック』生活情報センター)。ここ最近、苦戦も伝えられるが、ファンとしては逆転を期待したいところである。

2010年には、モスバーガーとミスタードーナツが共同運営する店舗「MOSDO(モスド)」1号店がオープン ©共同通信社
「MOSDO(モスド)」オープンに際し、記者会見するダスキンの山村輝治社長(左)とモスフードサービスの桜田厚社長(右) ©共同通信社