ただ、遺言書がある場合も、最低限の遺産の取り分である「遺留分」は渡さなくてはなりません。
せめて子どもがいれば……と、後悔しました。子どもがいれば竜ちゃんの遺産を、子どもと私がすべて相続できたからです。
何度「書いて」と言っても書いてくれなかった遺言書
でも結婚直後、竜ちゃんから、「子どもはいらない、作らない」と宣言されていました。私としては、そういう大事なことは結婚する前に言ってほしかったのですが、子どもの話になるたび、竜ちゃんは「作らない」と、いつも頑なに言い切って、まったく考えようとしないのです。
「子どもを作らないのだったら、きちんと遺言書を書いてよね。私のほうが10歳年下だから、あとで私のほうが残る可能性が高いんだから」と、繰り返し伝えてきました。
いつも竜ちゃんは、「自分の財産は全部、ヒーチャンに渡したい」と言っていましたが、口頭ではなく、遺言書という形にしないと、法的に認めてもらえないことは誰もが知っていることです。
だからこそ、しつこいくらいに遺言書を書いてほしいとお願いしてきたのですが、結局は書いてくれませんでした。
相続については専門の知識が必要なので、弁護士さんに依頼して、きちんと法律に則って遺産分割を行いました。
結果的に96歳の義理のお母さんも、希望どおり相続でき、竜ちゃんの最後の親孝行となって、よかったかなと思っています。
なぜ子どもはいらないのか、話し合ったことはなかった
それにしても、なぜ竜ちゃんが「子どもを作らない」と言っていたのか、これという理由を挙げていたわけでもないので、今となってはさっぱりわかりません。
竜ちゃんの知り合いと食事をしたとき、急に何の脈絡もなく、「上島家はどっちが子どもはいらないと言うんですか?」と聞かれて、びっくりしたことがありました。
すぐに竜ちゃんが、「ヒーチャンだよね?」と言ったので、私が怒って険悪なムードになり、帰宅した途端、大喧嘩になってしまったのです。