文春オンライン

「なんで子どもが欲しくなかったの?」上島竜兵さんを失った妻が抱く「本音をぶつけるべきだった」という後悔

source : 提携メディア

genre : ライフ, 芸能, 社会

note

そのため、何かしらの支払い用紙が毎日のように届き、「また支払わなきゃいけないのか……」と嫌になりそうでした。

忘れないうちに支払うというのを繰り返しているうちに、今、何のお金を支払っているのか、よくわからないようなときもありました。

クレジットカードは、ほかにデパートの外商部の家族カードがあり、そのカードも使用できなくなりました。デパートからすれば、頻繁に買い物をしていたわけではないので全然お得意様でもなんでもないのですが、「一家の主がいなくなると、残された者はただのオマケで、信用もなく、世間から放り出されてしまうのか……」と、少し寂しく感じたことを覚えてます。

ADVERTISEMENT

携帯ショップの偶然の出会いで気合を入れ直す

また、竜ちゃんの「携帯電話の解約」と、私が使用している携帯も竜ちゃんの名義になっていましたので、名義と支払い方法を変更しなくてはなりませんでした。

これまで携帯を機種変更する際には、毎回2時間くらいかかっていたので、携帯ショップに行くことがストレスになり、竜ちゃんから携帯を買い替えたいと言われていたのに機種変更を先延ばしにしていたくらいでした。

ネットで予約した日時に、必要書類を持って携帯ショップに行ったところ、担当してくれた方が付けている名札が、ふと目に留まりました。

名札には、「鬼海」さんと書いてあります。なんと読むのか、「おにうみ」なのか、「おにかい」、もしくは「きかい」なのでしょうか。私にとっては、初めて目にする苗字で、これから自分が行く末を示しているかのように思いました。

「そうか、私はこれからひとりで、鬼のいる海さえも渡らないといけないのだな」

その方には申し訳ないのですが、その瞬間、脳裏に浮かんだのは、真っ暗な海の上、荒波の中におっかない顔の大きな鬼が私の乗った船を掴んで、大きく揺らしている光景でした。

「なにくそ、鬼のいる海になんて落ちないぞ。家族カードを取り上げられたことなんて取るに足らないこと。なんだったら実家にはお供の犬だっているじゃないか」