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無報酬で交通・滞在費も自腹…北アルプス山小屋「夏山診療」をした女医が担う"プリズンドクター"の意外な年収

source : 提携メディア

genre : ライフ, 医療, 働き方

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刑務所の受刑者を診る「プリズン・ドクター」。テレビの情報番組のコメンテーターとしても知られるおおたわ史絵さん(総合内科専門医・法務省矯正局医師)は2017年からこの職務を担っている。以前は「夏山診療所」での勤務経験もある。こうした仕事は敬遠されがちだが、なぜ引き受けたのか。『プレジデントFamily』編集部の取材に答えた――。

※本稿は、『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)の一部を再編集したものです。

撮影=梅田佳澄 おおたわ史絵さん[出所=『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)] - 撮影=梅田佳澄

刑務所内の医師は一般病院より安全!

「最近、テレビや雑誌などで取材していただくことが増えたのですが、そのたびに私が『とてもいい人』みたいに表現されるんですよね。そんなことないんです。これが私の仕事、私の『なりわい』なんです」

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取材冒頭、おおたわ史絵さんはそう話し出した。

おおたわさんは内科医であり、2022年に出版され話題となった『プリズン・ドクター』(新潮新書)の著者である。テレビの情報番組のコメンテーターとしても活躍している。

「プリズン・ドクター」とは、法務省が雇う矯正医官、つまり、刑務所内のお医者さんのこと。著書は、おおたわさんが、塀の中の医務室での診療の様子や、それを通して感じたこと、考えたことを、時に軽妙なタッチもまじえながらまとめたものである。

まず、一般の人々はほとんど知る機会のない、刑務所内での医療について触れてみよう。

当たり前のことだが、刑務所に収容されている受刑者も、必要に応じて診療を受けることができる。風邪もひくし腰痛にもなるし、作業でケガをすることもある。

「悪いことをした人間に、一般人と同様に医療を施す必要があるのか」と抵抗を感じる人もいるだろう。刑罰を「懲らしめ」ととらえれば、その考え方にも一理ある。「懲役」には「反省」の側面もあるが、同時に、「償い」や「社会復帰のための支援」も大きな目的である。体調のすぐれない状態のままで収容していたのでは、これらの目的を達成しえない。刑務所内での医療とは、受刑のために不可欠なものといえるのだ。