文春オンライン

《父親の虐待の末に自死》塚原たえさんの叔母・藤田三保子氏が悔やむ「甥の身体に見つけた傷跡」

連載「ルポ男児の性被害」

2023/12/22

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース, 社会

note

「私の養子にしたい」「何をっ!」

 いわゆる「根性焼き」だった。三保子はこれを見逃せなかった。

 その夜、三保子は居間のテーブルを挟んで座っている剛に切り出した。

「たえと和寛を連れて帰る。私の養子にしたい」

ADVERTISEMENT

 剛は血相を変えた。

「何をっ!」

 握り拳でテーブルを叩きつけた。机上の大きな灰皿が宙に浮くほどの力だった。あまりの剣幕に、三保子は固まり、二の句が継げなかった。

 三保子が回想する。

「その瞬間、何をされるかわからない恐怖を感じました。子どもの時から彼の性質はよく知っているので、怯んでしまいました。怯まずに連れて帰ればよかったというのが最大の後悔です。その時子どもたちは性被害のことまで言いませんでしたが、私は想像するべきでした。タバコの火以上の、もっとひどい目に遭っているんじゃないかと」

藤田三保子氏 ©文藝春秋

 たえも居間で一部始終を見ていた。こう証言する。

「あの光景を見ていた私からすると、殺されるんじゃないかと思ったほど叔母の身が危ういのがわかったし、あれ以上のことを叔母に求めるのは無理です。そもそも相手が怖い人間だと知っていて、連れて帰ると言うのは並大抵の覚悟じゃありません。しかも自分も難病を抱えて、子育てしていた時期なんですから」

 養子にしたいと言ってもらったことは、たえの心の支えになった。

 翌日、三保子は東京へ帰った。自らにこう言い聞かせて、諦めた。私だってあんなひどい母親でも慕っていたし、離れたくなかった。実の親子なんだから無理に連れて帰ろうとするのは間違いなのかもしれない――。

実際には、藤田氏自身も兄からの性被害に遭っている――。その告発を含む、本記事の全文、および秋山千佳氏の連載「ルポ男児の性被害」は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

 

■連載 秋山千佳「ルポ男児の性被害」
第1回・前編 「成長はどうなっているかな」小学校担任教師による継続的わいせつ行為《被害男性が実名告発》
第1回・後編 《わいせつ被害者が実名・顔出し告発》小学校教師は否認も、クラスメートが重要証言「明らかな嘘です」
第2回・前編 中学担任教師からの性暴力 被害者実名・顔出し告発《職員室で涙の訴えも全員無視》
第2回・後編 《実名告発第2弾》中学担任教師から性暴力、34年後の勝訴とその後「ジャニー氏報道に自分を重ねる」
第3回・前編 《実名告発》ジャニー喜多川氏から受けた継続的な性暴力「同世代のJr.は“通過儀礼”と…」
第3回・後編 《抑うつ、性依存、自殺願望も》ジャニー喜多川氏による性暴力 トラウマの現実を元Jr.が実名告発
第4回・前編 「なぜ今さら言い出すのか」性被害を訴えた元ジャニーズJr.二本樹顕理さん 誹謗中傷に答える
第4回・後編 「ジャニーさんが合鍵を?」元Jr.二本樹顕理さんを襲った卑劣な“フェイクニュース”
第5回・前編 「性暴力がなければ障害者にならなかった」41歳男性が告発 小学3年の夏休みに近所の公衆トイレで…
第5回・後編 《母は髪がどんどん抜け、妹からは「キモい」と…》性被害後の家族の“拒否反応”の真実 41歳男性が告白
第6回・前編 目の前で弟に性虐待を行う父親 「ほら見ろよ」横で母親は笑っていた《姉が覚悟の実名告発》
第6回・後編 「絶対に外で言うなよ」父親の日常的暴力と性虐待の末に29歳で弟は自殺した《姉が実名告発》
第7回・前編 NHK朝ドラ主演女優・藤田三保子氏が“性虐待の元凶”を実名告発「よく死ななかったと思うほどの地獄」
第7回・後編 「昔、兄にいたずらされたことが」塚原たえさんの叔母、藤田三保子氏が“虐待の連鎖”を実名告発

 

男児の性被害について情報をお寄せください。
秋山千佳サイト http://akiyamachika.com/contact/

《父親の虐待の末に自死》塚原たえさんの叔母・藤田三保子氏が悔やむ「甥の身体に見つけた傷跡」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文藝春秋をフォロー