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「自分は相手を選んだのに、相手からは選ばれない」競争激化の婚活市場で「勝ち組」になるために最も必要な“2つの要素”

『パラサイト難婚社会』より #1

2024/03/07

genre : ライフ, 社会

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男女共に収入と容姿は比例している

 でも、考えてみれば、それも当然のことかもしれません。所得の高い両親のもとに生まれた子どもは、幼少期から栄養バランスの良い食事をし、運動系の習い事やアウトドアで適切な運動も重ね、多様な稽古事で美しい所作や行儀作法を習得していきます。身につける衣服は常に清潔で、TPOもわきまえており、美容室も定期的に通い、魅力的な容姿に近づくはずです。

 加えて幼少期から接してきた大人たちは、同様の経済レベルの人間が多く、ゆえなく一方的に怒鳴りつけたりすることもなく、丁寧に接してくれたでしょう。そんな環境下で生きてきた人間はたいがい鷹揚(おうよう)に育ちますし、他者に対しても余裕のある振る舞いができます。

 ある結婚相談所が、容姿と経済力の関係を調査したところ、男女共に収入が高い人ほど容姿が魅力的だと判定された、という結果もあります(調査結果非公開)。

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写真はイメージです ©maroke/イメージマート

「個人化の時代」では「個人の力が強い者」が強者に

 その逆はどうでしょう。中国の儒者、孟子の言葉に「恒産なくして恒心なし」というものがあります。「経済的に安定していないと、道徳心が生まれない」という意味です。もちろん所得の低い家庭の子どもには道徳心が育たないと言いたいわけではありません。金持ちの人間は道徳心があると言うつもりも毛頭ありません。

 しかし、「生活の安定」がない中で、365日心晴れやかに他人に感じよく接せられる人はどれほどいるでしょう。昨今の虐待事件の増加の背後には、子育て世帯の貧困化が潜んでいます。不安定な経済状態が、人々の精神状態や見た目にも影響を及ぼすのであれば、婚活市場の最大の武器である「経済力」と「魅力」の両方において、格差社会の縮図が表れているとしても不思議ではありません。

 いずれにせよ「個人化の時代」では、「個人の力が強い者」が強者になる。そんな事実を踏まえた上で、婚活現場ではどのようなスペックが実際に「結婚強者」となっているのかを、少々覗いてみることにしましょう。

パラサイト難婚社会 (朝日新書)

パラサイト難婚社会 (朝日新書)

山田 昌弘

朝日新聞出版

2024年2月13日 発売

「自分は相手を選んだのに、相手からは選ばれない」競争激化の婚活市場で「勝ち組」になるために最も必要な“2つの要素”

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