今や婚活者の5人に1人がマッチング・アプリでの出会いで結婚していく。消費者庁の「マッチングアプリの動向整理」によると、アプリを2年以上利用している人は20代が12.6パーセント、30代が17.5パーセント、40代が24パーセントとかなり多い。年齢が上がるにつれて利用期間も長くなるので、全世代では約4人に1人が2年以上アプリに入会している計算になる。婚活より自己肯定感の補完にハマり、“マッチング・アプリの沼”から抜け出せなくなってしまった男女が数多く存在するのだ。
ここでは、そんな“沼”にハマった人々を取材したジャーナリスト・速水由紀子氏の著書『マッチング・アプリ症候群 婚活沼に棲む人々』(朝日新書)より一部抜粋。「いいね!1000超え」の女性がアプリを辞められない理由を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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モテ女性が3年間も相手が見つからないワケ
35歳、168センチ。スタイル抜群の元モデルのアヤさんは20年間クラシック・バレエを続け、野菜ソムリエやヨガインストラクターなど多くの資格を持つ菜々緒系の美人だ。
艶やかなロングヘアに胸を強調した白ワンピースの写真はパッと目をひき、1000以上の「いいね!」がついている。
そんな彼女は常時、マッチング相手7、8人と同時進行し、新宿や恵比寿にある高級ホテルのレストランでゴージャスなディナーを楽しんでいる。
「あなたに会えるなら、とわざわざ北海道やハワイから飛行機で駆けつけてくる人もいる。当然、食事代は全部自分もちでいいと言う方しか会わない」。あっさりそう言い放つアヤさんなら、幸せな結婚なんて秒で手に入る……と思ったが、実はアプリに登録したのはもう3年前だ。
こんなモテ女性が3年間も相手が見つからないなんてなぜ?
俄然、興味が湧いてきた。
「本命になれない」トラウマがマッチングアプリでますます強くなる
「女王」のことを知ったきっかけは、偶然、知り合った男性会員Bさんのぼやきだ。
「この前、マッチングした女性の会おうという誘いを断ったら、私に会うために会社を休んで全国から飛行機で駆けつける人がたくさんいるのに、と逆ギレされた」
そんな女性会員がいるのかと興味を持ちいろいろ聞いていくと、容赦ない弱肉強食の世界で最強種に属する猛禽女性ユーザーの生態がリアルに浮かび上がってきたのだ。
個人で飲食店を営む小柄でシャイな感じのBさんが、大手マッチング・アプリに登録したのは3年前。今までにリアルで会ったのはほんの3、4人という。
Bさんは恋愛に大きなコンプレックスがある。これまでの恋愛で本命を落とすための当て馬的な役割をさせられることが多く、「自分は本命になれない」ということがトラウマになっていたのだ。それがアプリに登録してますます強くなったという。