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「モテる女性は複数進行が当たり前で、同時に何人ものマッチング相手と会って振り落としていく。ぼくはいつも最初に振り落とされる立場だから、最初から複数進行の女性はお断りなんです。プロフィールにもそう書きました」

自分に都合のいい相手と良い結婚相手は真逆のベクトル

 だが、どんな巡り合わせか皮肉なことに、そんなBさんにアヤさんが「いいね!」を送ったのだ。会おうと誘うアヤさんへの返事は「お誘いはありがたいが、複数進行ならお断りします」。今まで褒めちぎるだけのメッセージに慣れていたアヤさんはこの返事に逆上した。「私に会いたいという人が何十人も待っているのに失礼すぎる。あなたは何様なんですか?」何通かのメールで立て続けに攻撃されたBさんは、今、アヤさんをブロックして防戦している。

 このバトル、どちらも気持ちはわかるが、お互い結婚できない理由がここに凝縮されている気もする。つまり自分に徹底的に都合のいい相手としか会わない、それ以外は価値がない人間という偏った考え方だ。都合の良い相手というのはセフレだったり財布代わりや一方的な精神安定剤だったりするわけで、良い結婚相手とはむしろ真逆なベクトルなことも多い。

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 同時進行から始まるのが当たり前のマッチング・アプリで、Bさんのように「他に候補がいるなら自分を選ぶな」というのは、実は自分を特別扱いしろという傲慢さの裏返しだし、それに逆ギレして「私のようなセレブには会ってもらっただけで喜ぶべき」というアヤさんもあまりに傲慢すぎる。たとえ「いいね!」が1000の美女、イケメンでも、気に入らなければ断られるのは当たり前なのだ。

 こんな2人がほんの弾みでマッチングするのだからアプリは怖い。

32歳まで既婚者と不倫関係だったアヤさん

「いいね!」が1000超えなのに、なぜか結婚からは遥かに遠い。そんなアヤさんに興味を抱いた私は、本書のことを打ち明けて話を聞いてみることにした。ダメもとだったが、意外にもあっさりOK。「いいね!1000超えのアプリクイーンにインタビューしたい」というコンセプトを気に入ってくれたらしい。

 渋谷の某ホテルのラウンジに現れたアヤさんは、写真通りのはっきりした目立つ顔立ちに、鎖骨を見せる光沢のある黒ワンピがよく似合っている。背筋をピンと伸ばした姿勢やベルトで強調したウェストの細さに、日頃の女子力磨きの成果がうかがえた。元モデルだけあってメイクもうまく、「東京カレンダー」にワイングラスを持って登場しそうな雰囲気だ。

 ひとしきりアヤさんのアプリ道について話を聞く。

 最初は警戒していたが、やがて少しずつリラックスし始めたアヤさんの口から出てきたのはあまりにも意外な過去だった。

 実はアヤさんは32歳まで既婚の経営者と5年間、不倫関係にあったのだ。