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自分たちは“勝ち組”と思っている!? 世帯年収1400万円以上の“パワーカップル”が陥る、マンション購入の落とし穴

『なぜマンションは高騰しているのか』より#1

2024/03/25

genre : ニュース, 社会

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パワーカップルが陥る落とし穴

 超長期のローンを前提にしたマンション購入には、落とし穴があります。

 1つ目が、金利の変動です。変動金利は当然ながら、将来にわたって金利が約束されているわけではありません。多くの金融機関で、金利が上昇した場合も「キャップ」と呼ばれる上限金利を設定していますが、固定期間にも上限(10年程度)があります。

 【図表2】は、世帯年収1500万円の夫婦が金利2%で9433万円(年間返済額は年収の25%)を借り入れた場合の金利変動による返済額をシミュレーションしたものです。金利が上昇し、3%になると返済額は年間で60万6588円アップ、4%になると126万2268円、年収に対する返済比率は33.4%にも達します。これだと、かなり厳しいですね。

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【図表2】住宅ローンの返済額シュミレーション

 2つ目の落とし穴が、会社勤めにかかわるリスクです。上場企業の多くが終身雇用とはいえ、以前のような年功序列の給与体系は少なくなり、リストラなどによる降格や年収ダウンは珍しくありません。また、上場企業であっても業績が悪化し、倒産する事例も多くあります。2気筒エンジン(夫と妻)のどちらかが機能低下、あるいは機能停止するリスクを抱えているのです。

 3つ目の落とし穴が、離婚リスクです。マンションを購入する時にローンを組む際、パワーカップルの多くは、夫婦ペアローンを選択します。ローンを組むには、(1)借入名義は1人にして夫婦のどちらかが連帯保証人となる、(2)夫婦が別々にローンを調達して互いに連帯保証する、の2通りがありますが、所得税控除などの特典がダブルに使える(2)のペアローンを選択するケースがほとんどです。

 ということは、離婚した場合、片方がマンションに住み続けても、出て行ったほうも返済を継続しなければなりません。もちろん、片方がもういっぽうの債務を引き継ぐことはできますが、借入時点で目一杯に借りていると、1人での返済は厳しくなります。人間同士は別れることができても、マンションを分け合うことはできません。

 結局はマンションを売却して返済する形が多くなります。

 マーケットを賑わすパワーカップルですが、無理をすると、そのぶん被るリスクも大きくなります。とはいえ、マンションを手に入れたばかりの幸せな夫婦は、「これからも会社は安泰、夫婦そろって昇進・昇給、末永く仲睦まじい夫婦」であることを疑っていないでしょうが……。

自分たちは“勝ち組”と思っている!? 世帯年収1400万円以上の“パワーカップル”が陥る、マンション購入の落とし穴

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