マンション価格の高騰が止まらない。かつて「億ション(=1億円以上のマンション)」が話題をさらった時代が嘘のように、今の不動産業界では2億、3億超えのマンションでないと「超高額マンション」と呼ばない。

 ここでは、不動産業界に精通する牧野知弘氏が、高騰するマンション価格の謎を紐解く『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)より一部を抜粋。マンションの「買い時」に関して、日本人が陥りがちな勘違いとは――。(全4回の4回目/最初から読む

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マンションの「買い時」とは?

 最初にお断わりしておきますが、私は、住まいとしてマンションを買うことに反対ではありません。

 また、「持ち家と賃貸ではどっちが有利か」という質問をよくいただきます。その際に私が、所有する場合の注意点を詳しく述べるようにしているからか、世間では私を「賃貸派」にしているようですが、賃貸が絶対に有利であるとは述べていませんし、持ち家を否定するつもりもありません。

 私は、住宅は「買いたい」と思った時が「買い時」だと考えています。ただ、目の前の損得勘定で買うのではなく、自身の人生のなかで「買い時」を見極めて買うことが大事だと説いています。

 それでは「買い時」とはいつのことでしょうか。よく言われるのが、結婚した時、または子供ができた時に、手狭になったそれまでの住宅から新居に引っ越す時です。

©twds/イメージマート

 住宅は生活拠点ですから、自身の環境が変わる時点で決断することは悪くないと思います。ただ、必ずしも「買う」という選択に縛られる必要はないと考えます。

 一部の富裕層は別として、住宅を買うには住宅ローンによる資金調達が前提になります。一度ローンを組めば、毎月の元利金(元金+利子)返済が伸しかかります。しかも長期間にわたる返済になるので、自身の経済状況が今後も十分に見通せる状態になければ不安が残ります。

 重要なのは、無理をしないことです。不安要素が多ければ、世の中のムードとは関係なく、もうすこし賃貸に住み続ける選択をすることです。どうしても買いたい場合、私はアドバイスとして、毎月の返済額だけを見るのではなく、金利分も入れた借入期間中の返済総額を見て、自分の人生のなかで確実に返済できる確信を持つことを説いています。