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 若い頃に住宅を買うことは、早く資産を手に入れ、のちの人生が楽になると考えがちですが、いっぽうで今の人生を変えたいと思う時が来ても、ローン返済が足枷になって踏み切れなくなります。実際、私はそのような人を大勢見てきました。

 これからの時代は、1つの会社に定年まで勤め上げる人生モデルだけではありません。ローンに縛られて、転職など人生の大切なステージで決断を躊躇することがないようにすべきです。

人生における住宅の「買い時」

 私の祖父は実業家で、それなりの資産を築いた人でしたが、長らく、東京の千代田区一番町の借家住まいでした。祖父が中央区の1LDKのマンションを買ったのはリタイア後。すでに祖母は亡くなっており、気楽な1人暮らしができるマンションを買ったのです。祖父にとっての買い時は、仕事から完全に離れた時だったのです。

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「家族のために広い住宅を買いたい」と言う人がいますが、長い人生のなかで子育ての時間は、それほど長くはありません。しかも、最近は少子化により、子供1人の家庭が主流です。子供に部屋を与える期間はぜいぜい10 ~15年程度です。その期間のために、大きな住宅を多額のローンを組んで返済に追われるのは、必ずしも賢い選択とは言えないように思うのです。

 最近では、郊外の一軒家に住んでいたビジネスパーソンが、定年退職後に自宅を売却して、駅近のマンションに買い替える事例が増えています。子供たちが育って家を出たために部屋が余り、維持・管理が大変になって、コンパクトなマンション住まいを選んだのです。これも、立派な「買い時」です。

 俗に、アメリカ人は家を4回買い替えると言われています。新婚時は2人で過ごす小さなマンションを、子供が生まれる頃には郊外のタウンハウスに、子供が小学校に通う頃には郊外のすこし広めの一軒家に、子供が大学生になる頃には老後を過ごすのに良い環境にある小さな一軒家に買い替えるのです。アメリカ人は人生を合理的に考える傾向がありますが、確かに人生における住宅の「買い時」は、複数回あるように感じます。必要に応じて、その時点でベストな住宅を使い倒していく考え方になれば、住宅選びももっと自由になるのではないでしょうか。