マンション価格の高騰が止まらない。かつて「億ション(=1億円以上のマンション)」が話題をさらった時代が嘘のように、今の不動産業界では2億、3億超えのマンションでないと「超高額マンション」と呼ばない。

 ここでは、不動産業界に精通する牧野知弘氏が、高騰するマンション価格の謎を紐解く『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)より一部を抜粋。今、外資系法人やアジア諸国の人々の間で日本不動産が注目されている理由とは――。(全4回の2回目/最初から読む

◆◆◆

ADVERTISEMENT

外資系の買い漁り

 都市未来総合研究所の調査によれば、2022年に国内主要法人が取引した不動産売買額は4兆4796億円に上ります。件数は700件ですから、1件あたりの取引額は64億円、いかに大型の不動産売買が多かったかがわかります。年間で4兆円以上の取引額があると、不動産マーケットは活況と言われますが、コロナ禍による一時的な低迷(2020年)を除き、ここ数年は4兆円台をキープしています。【図表1】

【図表1】不動産取引額の推移

 マーケットで存在感を増しているのが、外資系法人による日本不動産の買収です。

 2022年における外国法人の「買い」は1兆1913億円、これまで買い手の主人公だったJ-REIT(不動産投資信託)を上回り、トップに躍り出ました。

 取引内容は、「バルク買い」と呼ばれる一括取得が目立ちます。【図表2】は、2022年の外資系法人による大型不動産取引の事例ですが、ホテルや賃貸マンションなど、1棟ではなく10数棟以上まとめて取得する事例が散見されます。

【図表2】外資系法人による不動産取得

 香港系の不動産投資会社ガウ・キャピタル・パートナーズは、日本において総額5000億円の不動産取得を表明していましたが、実際に、東京都港区の東京メトロ・青山一丁目駅直結のオフィスビル「青山ビルヂング」を840億円、千葉県印西市の大型物流施設「千葉ニュータウンロジスティクスセンター」を800億円で購入しています。さらに、J-REITである「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人」を丸ごと3294億円で買収し、世間を驚かせました。