前項のように、外資系法人による日本の不動産取得が目立つのはそのためです。さらに、日本の不動産価格が相対的に安いことも、彼らには魅力的に映ります。
日本不動産研究所「第20回国際不動産価格賃料指数(2023年4月時点)」によれば、ハイエンドクラスのマンションの価格水準比較で、東京(港区赤坂)の指数100に対して、北京124.2、シンガポール129.8、上海155.8、台北156.9、香港242.7と、東京の割安さが目立ちます。
いっぽうで、同グレードの賃料水準比較では、東京100に対して、シンガポール147.8、香港185.5を除けば、台北70.2、北京75.4、上海82.7など、東京は高い賃料を享受しています。つまり割安に買えて、高い賃料で貸せる、利回りが高い、ということになります。【図表3】
しかも、中国や台湾では、今後の政治リスク・戦争リスクなどを考慮して、資産を海外に分散しようと考える投資家は多く、自国から近くて政治的にも安定している日本の不動産は魅力的です。
彼らの投資スタイルは必ずしも短期の転売を狙うものではなく、自らの不動産投資ポートフォリオに日本の不動産を組み込むというもので、物件もマンションに限らず、オフィス、物流施設、ホテル、旅館など多岐にわたります。
日本のマンションが買われる要因
彼らは欧米の不動産にも投資を行なっていますが、日本を好むもう1つの理由が、日本が地理的に自国から近いことです。来日観光客の多くは中国、韓国、台湾、香港など東アジアの人たちです。
観光庁の調べによれば、東アジア人の日本旅行は今や複数回が当たり前になっています。【図表4】
2010年代前半は、中国人を中心とした東京、京都、大阪の2泊3日の観光は、「弾丸ツアー」「爆買いツアー」などと揶揄されましたが、今では日本通が増え、東京、大阪などの主要都市だけでなく、地方都市や景勝地、温泉地などを訪れるようになっています。そんな彼らが口を揃えるのが、「日本への旅行は国内旅行」です。
すなわち──何度も行くから、そのたびにホテルを取るのももったいないし、ゆっくりできるマンションを買っておこう。東京や大阪に買っておけば、子供が留学する際の住居になるし、日本在住の自国人に貸せば運用もできる。日本は不動産価格が上昇しているから、都市部のマンションなら売却益を狙えるかもしれない。しかも意外と安い! 特にマンションなら管理しやすい──。これが、彼らを日本のマンション買いに走らせる要因なのです。