マンション価格の高騰が止まらない。かつて「億ション(=1億円以上のマンション)」が話題をさらった時代が嘘のように、今の不動産業界では2億、3億超えのマンションでないと「超高額マンション」と呼ばない。
ここでは、不動産業界に精通する牧野知弘氏が、高騰するマンション価格の謎を紐解く『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)より一部を抜粋。超高額マンションを購入するようなパワーカップルが陥る「落とし穴」とは――。(全4回の1回目/続きを読む)
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全世帯の約0.66%を占める「世帯年収1400万円以上」
メディアでは、「高騰を続けるマンションを積極的に購入しているのはパワーカップル」などと報道されています。この「パワーカップル」とは、具体的にどのような人たちなのでしょうか。
パワーカップルという家族形態に、正確な定義はありません。おおむね、夫婦共働きで世帯年収の多い夫婦を指すようです。三菱総合研究所では「世帯年収1000万円以上の夫婦」、ニッセイ基礎研究所では「夫婦それぞれで年収700万円以上、世帯年収で1400万円以上」としています。
どちらが実態に即しているかは別として、高値になった新築マンションを購入できるのは、ニッセイ基礎研究所が定義する「世帯年収1400万円以上」になるでしょう。また、マンションの購入層は30代後半から40代ですから、その年代で年収700万円を超えるのは、2022年度の上場企業社員の平均年収638万円(帝国データバンク調査)を鑑みると、多くは上場企業に勤める社員ということになります。
パワーカップルは世の中にどれくらい存在するのでしょうか。ニッセイ基礎研究所の調査によれば、2022年で37万世帯、全世帯の約0.66%という希少種です。共働き世帯は全国で1646万世帯ですから、共働き世帯に絞っても2.25%です。割合こそ小さいですが、2018年時点でのパワーカップルは26万世帯ですから、わずか4年間で40%以上も増加しています。
家族構成はどうでしょうか。以前は、夫婦共働きで子供がいない世帯をDINKs(Double Income No Kids)と表現しました。夫婦で多額の年収を稼ぐので、パワーカップルの主体はDINKsかと思いきや、その比率は39.4%。パワーカップルの57.6%は夫婦と子供、つまりDEWKs(Double Employed With Kids)です。普通に夫婦で働いて子供も持つ。今はそんな、しなやかな時代になっているのです。