シンガポールの政府系ファンドGICは、東京都港区芝公園にあるホテル「ザ・プリンスパークタワー東京」を含む31棟の不動産を一括で購入、購入額は1500億円と言われています。同じくシンガポール系不動産投資会社キャピタランドは、東京都江東区にある商業施設「オリナス・モール・コア」を420億円で買収しました。
イギリス系の不動産投資ファンドM&Gインベストメンツは、神奈川県横浜市のオフィスビル「みなとみらいセンタービル」を800億円、東京都中央区の「グレースレジデンス東京」を含む30棟のレジデンスをまとめて492億円で購入しました。
アメリカ系の金融機関モルガン・スタンレーは、東京都江東区お台場のオフィスビル「有明センタービル」を400億円、神奈川県横浜市の「横浜野村ビル」を2期に分けて計664億円で購入しています。
欧米では、コロナ禍における金融緩和の影響でインフレが生じ、すでに金利が上昇しています。たとえば、アメリカの30年の固定型住宅ローン金利は7%を超えています(2024年1月時点)。しかし、日本だけが未だに低金利政策から抜け出すことができていません。
日本と欧米諸国との金利差は開くいっぽうで、金利差にともなう為替安は外国人投資家の目を日本の不動産に向かわせます。日本に来て、安い円を低金利で調達し、日本の不動産に投資する、という構図です。
バブル崩壊後、外資系投資ファンドは、価格が下がって身動きができなくなった不動産関連の不良債権を買い漁って高値で売り逃げたり、屑同然になった不動産をリノベーションやコンバージョンによって再生させて高値で売り抜けたりしました。
日本の不動産マーケットはもはや、個人客だけでなく、外資系法人による宴の場になっているのです。
アジア人から見た、日本の不動産
多くの日本人が気づいていないようですが、日本の不動産マーケットは世界に開かれた自由なマーケットです。日本の不動産所有権は私権が強く、また外国人が所有することに一部(土地規制法に抵触するもの)を除き、ほとんど規制がありません。
いっぽう、アジア諸国では、日本のように簡単に外国人が不動産を所有できません。中国では土地は国家のものですし、シンガポールでは外国人による土地の購入・所有は禁止されています。他の多くの東南アジア諸国でも、土地の所有権割合は50%未満に抑え込まれ、残りは現地の法人や個人が所有するようになっています。