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コンビニなら3000円台なのに…なぜ、2万円超の無地スウェットが売れるのか?

コンビニなら3000円台なのに…なぜ、2万円超の無地スウェットが売れるのか?

2024/04/12
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 以前、SNSで「スウェット」が炎上気味に話題となったことがある。その内容は「コンビニに売っている3990円のスウェットと3万3000円のスウェット、どちらに価値があるか?」というもの。「スウェットはしょせん消耗品」、「高価なのはブランド料」、「高級スウェットを着ると心が豊かな気持ちになる」など投稿された意見はさまざま。では、プロの意見はどうなのか? スウェットをこよなく愛し、これまで数々の工場の取材を経験してきた“日本一スウェットに詳しい編集者”、光木拓也氏(46)に見解を聞いた。(取材・構成/押条良太)

 

◆ ◆ ◆

全部同じに見えるのに…無地のスウェットの違い

――そもそも「スウェット」とはどんな服ですか? 「トレーナー」と呼んでいる人もいますが……。

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光木拓也氏(以下、光木) 「スウェット」とは、コットンの平編みのニット生地のことを指します。表面はなめらかで、裏地はタオル生地のような起毛があるのが特徴。丈夫で伸縮性に優れ、汗を吸収しやすいことから、スポーツウェアとして用いられてきました。

 ちなみに「トレーナー」は和製英語で、海外では「スウェットシャツ」と呼びます。

光木拓也さん

――インターネットで無地のスウェットを探したら、2000円台から3万円を超えるものまでさまざまなものが出てきました。一見全部同じに見えるのに、一体、どこに違いが?

光木 難しい質問です。洋服の値段には、生地やディテール、手間ひま、デザイン料などさまざまな要素が含まれますから。

コーディネートも簡単、大体どんな服にも合わせられる

――スウェットの場合はずばり生地でしょうか?

光木 生地はスウェットの命ですから、価格の差が生まれる要素のひとつです。ただ、僕自身は、スウェットはそれほど敷居の高い生地ではないと思います。

 スウェットは「メリヤス」とも呼ばれていて、漢字だと「莫大小」と書くんです。「大小莫(なか)れ」、つまり伸縮性があって不均一である、といった意味があり、かなり昔、関西ではいい加減な人を「莫大小(メリヤス)みたいな奴やな〜」と言うこともあったとか(笑)。それに糸もコットンですから、それほど高価なわけでもない。

――では、なぜこれほどの差が存在するのでしょう?

光木 そうですね。……スウェットって「白米」に似ていると思うんです。家でゴロゴロするときも、近所のコンビニに行くときも、街へ出かけるときも着る。コーディネートも簡単で、大体どんな服にも合わせられる。