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「ギータ感増し増し」の21歳、ソフトバンク・笹川吉康は“師匠”柳田悠岐を越えられるか!

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/06/22
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小久保2軍監督「吉康は人としても成長してきた」

 そして、今春。

 宮崎春季キャンプで汗を流す笹川選手は、今までよりもずっとカッコよく、逞しくなっていた。「ギータ感」も増し増しだった。身体つきも、スイングも、髪型も。全てが師匠により一層近付いているように感じた。

 リポーターを担当させて貰っている若鷹応援番組「ガンガン!ホークス CHECK!GO!」(J:COM九州やスカパーで放送中)のインタビューがちょうど笹川選手だったので、より気にして観察していたからか、いろんな変化に気が付いた。その日は最後の最後まで居残り打撃をしていたのだが、すごい集中力だった。

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 練習後、インタビューがあったことを思い出した笹川選手。汗だくだし、すぐ帰りたかっただろうに「ずっと待ってくれていたんですよね。ちょっと待っててください」と汗を拭いに行って、笑顔で戻ってきてインタビュー対応をしてくれた。こちら側としては待つのも仕事なので当然のことなのだけど、「お待たせしました」と些細な一言が優しかった。新人合同自主トレの時にぶっきらぼうだったとか言ってごめんなさい。そりゃ、2年も経つから大人にはなるのだろうけど、ちょっとした気遣いや言葉にすごく感動してしまった。きっと今年、何か大きな進化があるはずだと、笹川選手への希望が“確信”に変わったのだった。

 小久保2軍監督も「吉康は人としても成長してきた」と目を細めていた。今年は「打率3割」と小久保2軍監督と笹川選手は共に目標を立てている。ブンブン振らなくても当たれば飛ぶ。だから、ホームランを打ちに行くのではなく、今年はコンタクトすることに目標を定めた。

 と言いながら、すぐに結果が出るものでもないからもどかしい時間も続いた。なかなか率が残らない。かといってホームランが出ているわけでもなかった。2軍でもずっと出られるわけではなかったので、3軍でも実戦を重ねた。三振の数が多いことも指摘されたが、当の本人は「三振が多いからと言って気にしてはないです。でも、無くなった方がいいので無くそうとはしています」と気落ちするような感じではなく、ブレずにやるべきことを黙々とやっていた。これも笹川選手の強さなのかなと思った。もちろん結果にはこだわるけど、結果が出ないからと言ってブレるのではなく、黙々と。芯の強い選手だなと思った。

 打てなかったり、怒られたりしても、割と飄々としている。メンタルも強そうだと思っていたけど、笹川選手、実はバッティングのことを考えすぎて、夜寝付けないこともあるんだとか。ちょっと意外だった。人気漫画「NARUTO」のアニメ版を一気見して、励まされたりもしたそうだ。「ナルトになりたい」と言っていた。「自分の言ったことを曲げないド根性」がナルトの好きな所らしい。ナルトがどんどん忍術を覚えていくみたいに、自分も野球で打ち方をどんどん覚えていくんだってばよ! ……とナルトに重ねてモチベーションを上げていたらしい。そんな話をしている姿と、あの迫力満点のフルスイングにはギャップがありすぎてつい笑ってしまった。無邪気な一面もあるのだ。

実は無邪気な?笹川選手 ©上杉あずさ

 それもそうだ。だってまだ21歳。5月31日、笹川選手は誕生日を迎えた。この日は途中出場だったが、与えられた1打席で適時打を放ち、結果を出した。2軍のお立ち台にあたる“若鷹スピーチ”でマイクを渡された笹川選手は「私事になるんですけど、21歳になりました」とはにかんだ。その隣で優しい表情で見守っていた小久保2軍監督は「まだ21か~」と噛み締めるように言った。いち早い覚醒を望むのは当然ながら、まだ21歳。プロの世界、ゆっくりしている暇はないだろうけど、本当にこれからの逸材なのだ。「時間かかるかな~」と明石健志2軍打撃コーチもボヤいていたことがあったが、大覚醒の時は突然やってくるかもしれない。今年は何かカギになる一年になるんじゃないかと素人ながらに思っている(期待している)。ここからもっともっと笹川吉康というホープが面白くなってくるはずだ。

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