昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2018/12/18

「マンションポエムとは何か」という結論

 ここで「マンションポエムとは何か」という結論を披露する。ぼくの長年にわたるマンションポエム研究成果だ。

 まず、1148件のポエムを形態素解析してみた。これは大雑把に言うと、マンションポエムにはどのような言葉が使われているかを調べる作業だ。総語句数は19万語以上。「KH Coder」というテキストマイニングの世界でおなじみのソフトウェアを使って解析を行った。その結果が以下だ。

 

 このランキングを見て、ぼくはびっくりしつつ「やっぱりそうか!」と感動した。誇張ではなく、結果が表れた瞬間、鳥肌が立った。

 1位が「街」なのだ。

商品であるマンション自体には触れない

 よく考えてみて欲しい。マンションポエムとは、マンションを売るためのコピーだ。つまり、商品はマンションだ。なのに、建築や内装、間取りなどにはほとんど触れず、それが建つ場所について言葉と表現を費やしている。

 2位以降をずっと見ていっても、建築物を表す語がほとんど出てこない。この単純な集計だけで、すでにマンションポエムの真髄あるいは奇妙さがわかる。マンションポエム、それは土地の詩なのだ。

©iStock.com

 思うに、ある文章がポエムの体裁をとるとき、そこでは何かが隠されようとしている。政治家の言葉が時にポエムっぽくなるのは、都合の悪いことを隠蔽しようとするから。だから「マンションポエムは何を表しているか」ではなく「マンションポエムは何を隠しているか」を問うべきだ。そして、この集計結果から、その答えは「他ならぬマンションそれ自体を隠そうとしている」になる。

 そういえば、「東京の暮らしが取り戻すべき、日常」(三井不動産レジデンシャル「桜上水ガーデンズ」)や、「日本を、結ぶ」(ダイワハウス「プレミスト京都 烏丸御池」)、「日本人の心。けっして失われてはならないもの」(京阪電鉄不動産「ザ・京都レジデンス 御所南」)などのマンションポエムは現在の首相およびその周辺が発するスローガンに似ている。