1982年12月6日午後2時17分、関東地区に新型爆弾が使用され、第3次世界大戦が勃発した――とは、大友克洋のマンガ『AKIRA』の冒頭でのできごとである。場面はそれから一気に37年飛んで2019年、かつての東京は大戦後、東京湾上に建設された「ネオ東京」へと生まれ変わり、翌年にオリンピック開催を控えるまでに復興を遂げたところから、物語が始まる。
年が明ければ『AKIRA』の時代に追いつく
『AKIRA』は、講談社の青年マンガ誌『週刊ヤングマガジン』1982年12月20日号より連載が開始された。いまから36年前のことだ。現実の時間も、年が明ければ、ついに『AKIRA』で描かれた時代に追いつこうとしている。奇しくもその翌年に東京でオリンピックが開催されることも一致する。
折しも12月23日より放送が始まるNHKスペシャル『東京リボーン』シリーズ(NHK総合)では、タイトル映像のデザイン監修を大友克洋、テーマ音楽を作曲家の山城祥二、題字を劇画家の平田弘史がそれぞれ担当する。山城は大友自ら監督を務めた劇場アニメ版『AKIRA』(1988年)で音楽を担当した芸能山城組の組頭であり、原作マンガとアニメ版ともに題字を手がけた平田とあわせて、久々に『AKIRA』に携わったクリエイターが結集した。
なぜ『AKIRA』は東京五輪前の2019年なのか
それにしても、『AKIRA』の時代設定になぜ2019年が選ばれたのか。それはおそらく、同作の連載が開始された1982年が第2次世界大戦終結から37年後だったので、その時間幅をそのまま作中の第3次世界大戦後に当てはめたのだろう。期せずして予言することになったオリンピックも、その翌年がちょうどオリンピックイヤーにあたることから、現実の1964年の東京オリンピックがそうであったように、戦後復興の象徴としてネオ東京でも開催するという設定になったのではないか。それを証明するように、大友克洋は今回の番組に寄せたメッセージでこんなことを語っている。
《漫画の『AKIRA』は、自分の中では、世界観として「昭和の自分の記録」といいますか。戦争があって、敗戦をして。政治や国際的ないろいろな動きがあり、安保反対運動があり、そして東京オリンピックがあり、万博があり。/僕にとって東京というのは昭和のイメージがものすごく大きいんですよね》(※)。