2018年下半期(7月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。いいね!部門の第5位は、こちら!(初公開日 2018年10月2日)。

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10月1日、京都大学・本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授のノーベル医学・生理学賞受賞が決まった。本庶氏の研究を基にして作られた免疫薬「ニボルマブ」(商品名:オプジーボ)は、従来の抗がん剤との比較実験で圧勝。従来の抗がん剤と何が違うのか。評論家の立花隆氏が、本庶氏の「画期的研究」に迫った対談の抄録を特別公開する。(出典:文藝春秋2016年5月号)

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抗がん剤との比較実験で圧勝

立花 免疫療法と聞くと、僕はあまりいい印象を持っていないんです。免疫系が病原菌をやっつけるように、何らかの手段で免疫力をパワーアップして、がんを攻撃できるようにするという発想はアイデアとして悪くない。ヒトが本来持っている免疫系を使うわけだから、がんの三大療法である外科手術、抗がん剤治療、放射線治療より体に負担が小さいはずだという推測も納得がいく。

 しかし、これまでさまざまな免疫療法が華々しく登場しては、期待されたほどの効果を上げずにきました。そんな例をイヤというほど見てきたから、「今度こそ本当に効く」と言われても、今度もダメだろう、と思ってしまうんです。

本庶佑(京都大学特別教授) 提供=京都大学

本庶 ニボルマブ(商品名オプジーボ)が登場するまでは世界中のほとんどのがんの専門家が、免疫療法でがんが治るとは考えていませんでした。実際、これまでの免疫療法はほぼ失敗しています。立花さんのように「本当かな」と思われるのも当然ですね。

立花 本庶さんの研究チームが発見したPD-1は、免疫細胞の表面にあって免疫細胞に「攻撃ストップ」を命じるブレーキのような働きを持つ分子です。免疫は暴走して自分の臓器や神経を攻撃しはじめることもありますが、そうならないようにブレーキ機能がついているわけですね。

本庶 そうです。私たちの研究では、がん細胞は免疫細胞からの攻撃にさらされると、このブレーキを踏む分子(PD-L1)を出したり、他の未知の仕組みで免疫細胞の攻撃をストップさせることがわかりました。がん細胞が免疫細胞による攻撃をはねのけ、際限なく増殖を続けることができるのは免疫細胞の監視を逃れる仕組みを持っているからなんですね。

 これを応用して、もし免疫細胞にブレーキがかからないようにすれば、がん細胞に対する攻撃はもっと続くのではないかと考えました。ニボルマブという新薬は、がん細胞が免疫のブレーキを踏めないようにブロックします。免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる新しいタイプの薬です。