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アジアカップの“ド本命”日本代表 「それでもキツい」優勝への3条件

過去4度の優勝から学べることとは

2019/01/05
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(3)「受け身にならない」――選手たちに自主性は生まれるか

 負ければ敗退になるトーナメントの戦いはどうしても手堅い戦いになりがち。だが一歩間違ってしまえば、消極性を招きかねない。過去の大会では手堅く戦いつつも、積極性を持つことで栄冠をつかんできた。

 その象徴的なシーンとして挙げたいのが2000年レバノン大会、サウジアラビアとの決勝戦(1-0)。1点差を守って終盤を迎えた状況で、自陣深い位置で与えたサウジアラビアのFKに対して松田直樹が音頭を取ってオフサイドトラップを仕掛けたのだ。横浜F・マリノスで松田とチームメイトだった川口ですら驚いた決断だった。

「普通なら失点するリスクを気にしてしまうところ。でもマツは平気な顔をしてトラップを仕掛けたんです。何が凄いかって、タイトルが懸かってプレッシャーを感じてしまう状況であっても正しい決断ができるスケールのデカさ。周りからは『アブねえよ』って声もありましたけど(笑)」

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2000年大会、トルシエ監督のもとセンターバックとして起用された松田直樹(左)と森岡隆三 ©ALFO

 勇気を持って、正しいと思ったことをやり切る。松田の積極性が、決勝を締めくくったのだった。

 また、11年カタール大会、オーストラリアとの決勝戦(延長1-0)。0-0のまま進んでいた後半5分、ザッケローニ監督は空中戦対策のために岩政大樹の投入を決め、センターバックの今野泰幸をアンカーに上げようとした。しかし今野がケガをしていたこともあって自ら「×印」を出した。ピッチでは選手たち同士で話し合いが持たれ、長友を上げる案を指揮官に進言することになる。実は指揮官の思いも同じであったという。右サイドバックのロングボールを長友佑都が前から封じ、岩政が空中戦に競り勝つことで日本が主導権を握るようになった。

 受け身になるのではなく選手のほうから働きかけていく積極性。チームの集中と勝利への意欲をあらわしていた。

 過去から学ぶことはいっぱいある。

 ここに挙げたものはあくまで一例に過ぎない。優勝を繰り返してきた伝統が、必ずや日本の力となるはずだ。

 日本は1月9日、トルクメニスタンとグループリーグ初戦を迎える。

 約1カ月の長丁場の戦い。ピンチはチャンス、チャンスはピンチ。2大会ぶりの優勝に向けて、どんなドラマが待ち受けているだろうか。

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