1ページ目から読む
2/3ページ目
自分で一番トクしたなと思うのはね、不器量と言うか、不細工だったことなんですよ
私が今日まで生きてきて、自分で一番トクしたなと思うのはね、言葉で言うと、不器量と言うか、不細工だったことなんですよ。
私は、普通だと思ってるんだけども、他人(ひと)がそういうふうに見るから、ああ、そうなんだなあと思って見ているうちに、器量よしばっかり集まる芸能界に入っちゃったんですよ(笑)。
今でこそ、役の広がりが出てきましたけど、昔はお手伝いさんまでも、器量よしがやったわけですからね(笑)。ま、だから、自分が不器量だということに早目に気がつかされちゃってね。
それでね、案外自分としては、男を見誤らないできたという確信があるんですよ。要するに、見誤らないというのは、自分がこうだと思ったとおりなんです。それを選ぶか選ばないかは、自分の縁ですからね。
だから、不器量であるために、他人が私に関心を寄せないから、こっちが自由に人を判断できる。今日まで、いろんな男の人との出会いがあって、中には、うーん、ねえっていうのもありますけれど(笑)、それも含めて納得しているんですね。不器量のトクな点だなあと。
(「そして、現代に貞女はいなくなった…」1988年3月)