かつては100均で取り扱われていなかった、Lightningポート搭載iPhone向けの充電ケーブルが、この2~3年で続々と登場しています。

 日本ではiPhoneのシェアが高いためニーズがあるのは確実ながら、これまで取り扱いがなかったのは、ひとえに正規ライセンス取得にからむコストの問題が大きいと考えられます。いま取り扱われているのは、Appleの正規ライセンスを取得せずに機能を充電だけに絞り、また特定のiOSバージョン以下でのみ動作を保証した製品です。

 これら製品のパッケージには、Lightningケーブルという表記はどこにもなく「ライトニング端子に対応した充電ケーブル」とのみ書かれています。正規にライセンスを取得したLightningケーブルとは何が違い、どのようなリスクがあるのか、実際に各社の製品を購入して調べてみました。

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100均で販売されている3種類のiPhone用充電ケーブル。左から、ECoreの「L-8」、大創産業の「携帯電話No.68」、山田化学の「No.671」 

100均ケーブルで気をつけるべき3つのポイント

 今回購入した3つの製品は、いずれも本家のLightningケーブルにはない、複数の共通点があります。

 ひとつは表裏があること。いずれのケーブルも、コネクタの片面に「UPSIDE」という表記があり、この面を上にして挿入するよう注意書きがあります。本家のLightningケーブルのように、表裏リバーシブルで充電できるわけではありません。

コネクタ形状。表裏でまったく異なっていることが分かります。ちなみに3社の製品はカバーやケーブルの色、長さ、被覆の素材は異なるものの、形状はほぼ同一です

 もうひとつは、充電にしか対応しないこと。通常のLightningケーブルはPCなどとのデータ転送もサポートしますが、これらは充電以外の機能をサポートしません。パッケージで「充電ケーブル」「充電専用ケーブル」と大きく銘打っているのはこのためです。

純正のLightningケーブル(いずれも向かって左)との比較。データ転送に使われるピンが省略されているのが分かります 

 3つ目は、iOSの特定バージョンまでしか動作確認が取れていないこと。文言は微妙に異なりますが、3製品とも「iOSの特定バージョンで動作検証済み」「以降のアップデートでエラーメッセージが表示される可能性あり」といった意味の注意書きがあります。

今回の3製品はそれぞれiOS 11.1.2、10.2.1、11.1で動作検証済みとされており、それ以降はエラーが表示される可能性ありとしています 

急速充電では「エラーが起こりやすい」

 なぜ3社ともこうした、似たり寄ったりな仕様になっているのでしょうか。Appleは海賊版による事故を防ぐため、OSアップデートに合わせてこまめに仕様を変更し、正規の認証チップを内蔵しないケーブルを排除しようとしています。これらをパスしていない製品は将来的に使えなくなる可能性が高いため、その免責としてこうした注意書きがあるというわけです。

 また、急速充電をサポートするアダプタやモバイルバッテリーとの組み合わせで、エラーが起こりやすいのも特徴です。今回「iOS 12.1.1」環境で試したところ、iPhone添付のアダプタとの組み合わせでは3製品とも問題なく充電が行えましたが、サードパーティ製の急速充電規格のアダプタとの組み合わせでは、純正ケーブルが約2倍もの速度で急速充電できたのに対して、3製品の中には、まったく電力が供給できない(つまり使えない)製品もありました。

iPhone添付のアダプタと組み合わせた場合のテスト。どれも1A前後という、一般的な値で充電できています(この写真では省略していますが電圧は5V前後です) 
急速充電規格「PowerIQ」対応アダプタでの充電テスト。右下の純正ケーブルは2倍近いパフォーマンスを発揮していますが、ほかのケーブルは急速充電ができておらず、また右上のケーブルに至っては充電自体が行えていません(0.00A)