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「他の映像配信は敵でない」とNetflix

 これらの戦いをどう見るか?

 実は「トップを巡る戦い」にはなりそうにない。

 先行する諸外国では、意外なことに、利用者の多くが2つ以上のサービスに加入している。1サービスの利用料は数百円から2000円までで、従来のケーブルTVなどに比べると安価だ。契約するのも解約するのも簡単なので、複数社と契約し、コンテンツ網羅性を高めた方が利便性が高い。Netflixのリード・ヘイスティングスCEOは「他の映像配信は敵でない」と公言している。言葉の意味は「自社が勝っている」という意味ではなく、併用者が多いので、他の事業者とは椅子取り合戦にはならない、という意味だ。

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©getty

 現状、日本で一番有利なのはアマゾンだ。月単位での単価が一番安い上に、通販に有利なサービスなどもセットになっており、映像配信以外を目的に加入している人も多い。

 テレビ局系のサービス、特にHuluの認知度は非常に高い。過去に比べ弱くなったとはいえ、「地上波」の周知力と番組制作力はあなどれない。過去・現在の人気ドラマに魅力を感じる人は多いだろう。

 一方、Netflixもコンテンツの良さは評価されている。地上波の視聴習慣が弱くなった消費者には、「テレビ的」なコンテンツの力は弱くなる。とすると、「テレビでは見られない」コンテンツを作っている、Netflixやアマゾンが支持される可能性は高い。

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 ただしネット配信は「いつ誰が、どのくらい見ているか」という指標がなく、盛り上がりを作りづらい、という問題点がある。テレビのように「皆が一斉に見る番組」というイメージを作りにくい。有料配信であるからなおさらだ。

 ゆっくり衰退する地上波はそのままでは厳しいが、ネット配信も日本では「そのまま」では定着しえない。日本市場にあったバランスの構築に向け、綱引きが激しさを増している。

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