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まだまだ隠れている『いだてん』の華麗な伏線

 また、明治と昭和をつなぐ人物として登場した落語家・古今亭志ん生(ビートたけし)と彼に押しかけ弟子として入門した小松(神木隆之介)との間にも何かしらの“因縁”があるのは間違いありません。1話で小松の弟子入りを断った志ん生が、3話では五りんというオリンピックを想起させる名を与え、自宅に出入りさせているのはなぜか……五りんは「親父の言いつけで毎朝やらなくちゃいけなくて」と庭で冷水を浴びますが、その直後に時が明治に飛び、四三が同じく冷水を頭から浴びる姿が映し出されます。明治の終わりの浅草でニアミスを繰り返す若き日の志ん生(=美濃部孝蔵・森山未來)と四三の人生が、どこで交差して昭和に生きる五りんにつながっていくのか(五りんが金栗の息子と考えるのはストレート過ぎて違う気も)。ここにも必ず天才・宮藤勘九郎の「華麗な伏線回収」があると確信します。

落語家(ビートたけし)に入門する弟子・小松を演じる神木竜之介 ©文藝春秋

『あまちゃん』で盛り上がった小ネタに関しては、まださほど表出していない模様ですが(強烈なのは、1話で中村勘九郎演じる四三が雨の中ゴールした時に、赤帽のインクが流れて歌舞伎の隈取りにも見えたことでしょうか)、今後、三島弥彦(生田斗真)率いる「天狗倶楽部」の面々がいろいろやらかしてくれると期待が高まります。

『いだてん』は”つなぐ”ドラマ

 公共放送である以上、視聴率が取りざたされるのは仕方がないとも思いつつ、正直、何ポイント上がったとか下がったとかどうでもいいんです。そんなことより、1年に渡って紡がれる大河ドラマ『いだてん』で、宮藤氏が関東大震災や第二次世界大戦をどう描き、『あまちゃん』より多くて濃い登場人物たちを「オリンピック」という大キーワードの中、どう活かしていくか。そのほうがずっと重要。

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『いだてん』は“つなぐ”ドラマです。中村勘九郎が阿部サダヲに主役のたすきをつなぎ、明治から昭和へ、平成から新元号へ。そして2019年から2020年の東京オリンピックへとさまざまなバトンが手渡されていく。武将でも天才でもない市井の人々が必死にバトンをつないで時代を駆け抜ける姿を、私は年末まで鼻息荒く見つめたいと思うのです。

『いだてん』の制作発表会見での阿部サダヲ(左)、中村勘九郎(中央)、宮藤官九郎(右) ©共同通信社