そして迎えた第2回目のオンエア。「坊っちゃん」とサブタイトルが付けられたこの回では、前半の主人公“日本で初めてオリンピックに参加した男”金栗四三が熊本で誕生した瞬間から幼少期、少年期を経て海軍兵学校の入試に落ちるまでのエピソードが描かれました。
で、その2回目の放送を観終えた瞬間、パッと目の前が晴れたのです「ああ、そうだ、そういうことじゃん!」と。
宮藤脚本ならではの「大胆かつ緻密な伏線回収」
宮藤官九郎脚本の醍醐味のひとつが「大胆かつ緻密な伏線回収」。『木更津キャッツアイ』では時間の巻き戻しにより謎が解明され、『あまちゃん』ではアキの母・春子の過去、春子と大女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)や芸能プロ社長・荒巻(古田新太)との隠された関係など、物語が進むにつれパズルのピースがバンバンハマっていきました。
そんな『あまちゃん』の数ある伏線回収の中で一番驚き胸打たれたのが、ジオラマの存在です。初回放送で、アキと春子が訪れた北三陸観光協会。そこに適当に置かれ、職員たちのゆるさの象徴として、その後のエピソードでもたびたび登場した北三陸のジオラマが、ドラマの後半、東日本大震災の被害状況を表すため、めちゃめちゃな状態になって現れた時は息をのみました……リアルに被災地の風景を映し出さなくとも、あの震災で壊れたもの、失ったものが言い表せない哀しみとともにダイレクトに伝わってくる……凄い、こんな表現見たことない。
早くも伏線の回収は始まっている
じつはまだスタートしたばかりの『いだてん』でも、心に刺さる伏線の回収は行われています。
第2回目のオンエアで虚弱な父(田口トモロヲ)は、身体の弱い5歳の四三を熊本滞在中の嘉納治五郎に抱っこしてもらおうと山を越えるのですが、人ごみに負け、治五郎と話すことさえ叶いません。が、家族には「四三は治五郎先生に抱っこしてもらったばい」と死の間際まで嘘を吐き通します。
ここで思い出して頂きたいのが、第1回放送「夜明け前」のラスト。大人になり東京の師範学校に進んだ四三は嘉納がストックホルムのオリンピックに派遣するマラソン選手を探すため催した大運動会でぶっちぎりの1位を獲り、ゴールで嘉納に抱きかかえられるのです……それは父の嘘が真(まこと)になった瞬間でした。