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自らエコノミーシートに座った森保監督

 思い出されるのは、昨年9月のこと。札幌で、森保監督が就任してから初めての試合を行なう予定だったのだが、北海道胆振東部地震に襲われて試合は中止になった。

 さらに、その余波で飛行機も欠航が相次いだ。幸いにして、日本代表は、地震の起きた2日後には、次の試合が行なわれる大阪へ向かう飛行機に乗ることができた。ただ、使用する飛行機の都合上、上級クラスのシートの数には限りがあった。今大会のメンバーにも選ばれている20歳の堂安律と冨安健洋などの年齢が下の一部の選手たちは、一般の搭乗客とまじってエコノミークラスのシートに座ることになった。

 席数が限られているのだから、一部の選手たちがそうなるのは仕方のないことかもしれない。

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 ただ……。

 そんななかで、森保監督は自身がチームのトップであるという威厳を振りかざすのではなく、一般の乗客に比べて身体の大きい選手たちが窮屈な思いをしないようにと、自ら率先してエコノミークラスに座ることにしたのだ。

 歴代の監督のなかには、選手たちがビジネスクラスで海外遠征に向かう便で、組織のトップとしてさらに上級のファーストクラスに身を預ける者もいた。そもそも、監督が選手よりも上級の席に座るというのは、欧米だけではなく日本でもごく普通に受け入れられるものだ。

 しかし、そんな表層的なことには興味を示さない。相手の気持ちや立場を思いやったうえで、コミュニケーションを取る。それが森保流のマネジメントなのだ。

今大会2得点の20歳堂安律(右)と24歳の南野拓実。今大会は森保監督が起用する若手の台頭も目立つ ©AFLO

森保監督の最大の強みが見えてきた

 サッカーの監督に求められる仕事は、大まかに以下の4つに分けられる。

1、どのようなフォーメーションで、どんな狙いを持って戦うのかを決める「戦術」
2、衣食住の環境作りから選手の起用法まで、試合や大会を制するための「戦略」
3、選手が少しでも良いパフォーマンスを試合で見せるための「コンディショニング」
4、選手やスタッフが全力を披露するためのモチベーションをあげる「メンタル・マネジメント」

 現在の日本代表の選手たちの面々から受けるのは、高いモチベーションを持って練習や試合に臨んでいるという事実である。つまり、森保が日本代表の監督として最大の強みとしているのは「メンタル・マネジメント」であるように映る。

 1月28日、アジアカップ準決勝で対戦するイラン代表はFIFA(国際サッカー連盟)の選定するランキングがアジアのなかで最も高く、今大会でカタール代表とともに、無失点を続けるチームである。彼らの「戦術」面での強みは、現在の日本代表を上回っているのかもしれない。

 そんな特長と強みの違うチームと対戦する次の試合で、森保監督の「メンタル・マネジメント」の真価が問われることになる。