昨年9月に永眠した樹木希林さん ©文藝春秋

「昨年9月に女優の樹木希林さんが75歳で亡くなりました。私は年齢だけで言えば、彼女より上ですが、彼女の『極上の生き方』には、憧れに似た、尊敬の気持ちを抱きます」

 こう語るのは『家族という病』や『極上の孤独』などの著書で知られる、作家の下重暁子さん(82)だ。

 下重さんは、希林さんの生前の言葉を集めた『一切なりゆき~樹木希林のことば~』(文春新書)を読み、こんな一節に共感を覚えたという。

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〈苦労して美しくなるというのは至難のわざですね。根本的に自分が存在していることが申しわけないとか、恥ずかしいと思えたときに、女って色っぽいんだなと思うんです。

 なんでも「私が」「私が」という。世の中が「私が」を主張するようになってきたということは、そういうことをしないと自分がいることが確かめられないという心もとなさなのかなと思うんです。そう考えれば女って哀れだなと思うところでいとおしくはなりますけれども、「私が」と牙をむいているときの女というのは醜いなあというふうに思うわけですね〉(『一切なりゆき』p151)