5月15日発売の『百花』(文藝春秋)

『告白』『悪人』『モテキ』『君の名は。』『怒り』など、数多くの映画を企画してきた川村元気さんが、2年半ぶりの小説『百花』(文藝春秋)を5月15日に刊行する。『世界から猫が消えたなら』『億男』『四月になれば彼女は』に続く4作目の小説の題材は「認知症」だ。

 認知症になりすべてを忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく息子との物語。ふたりがどうしても消し去ることができない“事件”とは――?

 川村さん自身の祖母がアルツハイマー型の認知症となり、祖母の元に通い、話しを聞き、さらに認知症患者やその家族、医療・介護関係者ら100人以上を訪ねて書いた作品だという。

 刊行に際して、本作に寄せて3人の著名人からメッセージが届いた。

山田洋次監督

「深い感動のうちに読了した。ぼく自身の母親の思い出と重なり、他人事ではなかったのだ。」

 

吉永小百合さん

「息子と母の切ない思いに、胸が熱くなりました。」

 

あいみょんさん

「“記憶”というものは決して自分1人のものではなく、時には誰かと自分自身を繋ぐレールになっていると思った。食い違うこともあれば脱線もする。記憶はあくまでも瞬間の記録で、なんだか夢みたい。悲しい記憶も嬉しい記憶も、ああ全部夢だったんじゃないかと感じる日がある。

一度失ったからこそ、
二度と失いたくない息子への想い。
一度失ったからこそ、
二度と忘れられない母への想い。

夢のような記録。あの日を繋ぐ記憶。」

 映画監督、女優、シンガーソングライター、仕事も年齢も異なる3人は川村さんにとって、どのような存在なのだろうか。本人に尋ねた。

「山田洋次監督は『仕事。』という本で対談して以来、山田監督主催の映画監督サロンの場を通して交流させて頂いている大先輩。人間の感情をいかにリアルに描いて伝えるのか、いつも教わっています」

「吉永小百合さんとは撮影現場でお会いしたことあるのですが、少女のような清廉さと、女優としての芯の強さのようなものを同時に感じる特別な存在です。本作は誠に勝手ながら吉永小百合さんを、主人公の百合子に重ねて当て書きしていました」

「あいみょんさんの歌にはいつも、自分の記憶のどこかにしまいこんだ景色や感情を呼び起こされるような気がします。今一番、興味を惹かれるシンガーソングライターです」

 川村さんにとって特別な存在の心を動かしたこの作品。現代を生きる人々すべてにかかわる物語だ。

川村元気さん ©文藝春秋

百花

川村 元気

文藝春秋

2019年5月15日 発売