文春オンライン

キレッキレのジョジョ立ち 学生陸上800mのトップランナー・鹿居二郎が話題に

観客が大歓声を送るパフォーマンスの理由とは

2019/06/24
note

800mが「陸上の格闘技」と呼ばれる理由

 そうして自分のためにはじめたパフォーマンスは、鹿居自身が想像もしていなかった流れを生むことになる。

「レースが終わった後に『パフォーマンスがあったから初めて800mを見てみたけど、すごく楽しかった』ということをSNSで言ってもらえるようになって。アップの前とかに競技場の周りを歩いていると『パフォーマンスも期待しています』みたいな声もかけてもらえるようになりました。そこで気づいたのが、自分のパフォーマンスが800mという種目自体に注目してもらえるきっかけになっているんだなということでした」

 

 800mという種目は、海外では非常に人気の高い種目だ。わずかトラック2周の中で、ポジション取りやペースの上げ下げなど、一瞬の駆け引きが数多く行われる。レース中には位置取りを争うための身体接触も多く「陸上の格闘技」と呼ばれることもある。

ADVERTISEMENT

「頭脳戦みたいな部分も大きい種目なんです」

 その一方で、日本における中距離種目は、あくまでマイナー種目の域を出ていない。鹿居としても、そこには忸怩たる思いがあったのだという。

「やっぱり日本だと箱根駅伝がある長距離や100m、リレーが注目されがちだと思います。でも、800mという種目の面白さにもっと注目してもらいたい。800mは一瞬の駆け引きがすごく大切な競技です。傍から見ていると『そこで仕掛けるの?』みたいに思うような展開でも、走っている選手からすると『ここで仕掛けないと絶対自分は勝てない』という頭脳戦みたいな部分も大きい種目なんです。

 

 注目されることによって、800mという競技のレベルが国内でも上がっていくと思いますし、そのきっかけに自分がなれればという部分もあって。いまはパフォーマンスを通して競技そのものをいろんな人に知ってもらえたらなという考えでやっています」

 実際、中距離選手は進路を選ぶ際にも苦境に立たされることが多い。

「中距離では実力のある選手でも、まだまだ伸びる選手であっても、大学卒業後には競技を継続できる環境がなくて断念してしまう人が多い。そういうのってすごくもったいないと思うんですよ。数少ない実業団に行くか、院に行って続けるぐらいしか選択肢がなくて、そもそも競技を続けていくこと自体が困難なのが現状です。

 そういう部分を打破する意味でも、中距離に注目が集まって、メジャーになってくれたらいいなと思います。そのために、私も少しでも競技を盛り上げていければいいなと思っています」