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ベイスターズファンが今噛みしめる「耐えて勝つ」ということ

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/09/12

 ラミレスは監督就任時、こう語っていた。

「やはり負けが込んでくると『ああ、やっぱりか』という空気になってしまう。それは選手もファンも、同じです。僕が現役でチームにいた2012年、2013年も負けが込むと、どうしてもチームの雰囲気がネガティブになっていた。監督になった今、上に行くために必要なものはその空気をどうにかして変えることだと思っています」(webSportiva 2016年1月1日付記事より)

 “ああ、やっぱりか”

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 このチームを応援すればするほど、僕らはそんな諦めの良さをいつの間にか身につけてしまう。それは今年だって何度も頭をよぎったこと。春先の大型連敗、8月の5連敗、9月頭にまた5連敗。“やっぱりまだ優勝できるようなチームじゃないよね”。その度にそうやって物分かりのいい振りをして、何とか自分を納得させようとする。

 さらには、今永が丸に投げた最高のスラットに球審が手を挙げてくれたら初戦は獲れたはずなのに、というタラレバの気持ち。絶対に勝ちたかったエース登板の試合で負けた辛さと絶望感を、そうやって判定に転嫁することで鎮めようとする。

 でも、今年のベイスターズは僕らが諦めかけた途端に「まだ終わっていないよ」と言わんばかりの戦いを見せてくれる。昨日(11日)の試合、ここ最近ずっと淡白だった打線が嘘のように繋がって14安打10得点。なかなかヒットの出ない大和が果敢に2塁を狙えば、乙坂はセーフティーバントを仕掛け、倉本はヘッドスライディングで内野安打をもぎ取った。さらに復帰初戦の伊藤光は技ありのレフト線ギリギリのツーベース。極めつけはソトのスコアボード破壊弾に得意の「アッチ向いてホイ打法」を含む3本塁打と、梶谷の天才的バット使いの値千金ホームラン。2ケタ安打は8月29日、2ケタ得点に至っては実に8月9日以来。久しぶりに気持ちのいい勝ち方だ。

9月11日の巨人戦で3本塁打を放ったソト(C)共同通信社

 ずっとしんどい戦いをしていると思う。8月は打率.238(リーグ5位)で防御率は4.61(リーグ最下位)。得失点差は-17まで達した。それでも14勝13敗、どうにかこうにか勝ち越したのだ。9月のチーム打率に至っては.204、得点圏打率.206(いずれも10日まで)。数字を見ればガタガタだけど、何とか2位に踏みとどまっているのは昨日のようにここ一番の試合を落とさないこと、勝っても負けても次に繋がる試合をしようとしていることに尽きるのではないか。

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