その5 限定しりとり
しりとりの際に、使える文字そのものに制約を設ける。制約の種類はかなり豊富にあるが、だいたい3つのパターンに分類できる。
パターン1「音」に制約を与える
・「ア段」禁止
・濁音禁止
・濁音が二つ以上必須
・何文字目であっても「ん」を禁止
パターン2「音数」または「字数」に制約を与える
・5音以上の言葉限定
・音数が素数(2、3、5、7、11……)限定
・漢字にした時の字数と音数の差が3つ以上の言葉(たとえば「優等生」「給料泥棒」など)限定
パターン3 言葉の「性質」に制約を与える
・外来語禁止
・熟語限定
・固有名詞限定
などなど、こういったルールを追加する。特に大人数でやる場合などは、1ターンごとにルールを変えてゆくとスピーディになって面白い。「外来語禁止」ルールだと、件の「る」攻め戦法がほとんど封じられてしまう
しりとり→りんご→ゴリラ→らっこ……というしりとりのお約束的スタートダッシュも、「オ段禁止」というルールが与えられてしまったら別の流れを考えなくてはいけなくなる。するとどうなるか。
しりとり→リズム→昔話→シラスウナギ→銀河→ガラス→砂場→バナナ→ナイアガラ→ラグビー
退屈なお約束が破られて、ずいぶんと違う風景が見えるようになってきたんじゃないだろうか。ちなみにこの流れ、「濁音必須」のルールも実は同時に実行している。正直なところ、プロしりとらー(?)は一つ程度の制約ではとても物足りず、ダブル制約くらいにむしろやりがいを感じてしまうのだ。
それでは次に試してみよう。「字数が素数」限定しりとり(字数は全部ひらがなにしたときの。小さい「やゆよ」も一字扱い)。加えて、「固有名詞」限定。
しりとり→力石徹(7)→ルー・リード(5)→ドナルド・ダック(7)→工藤公康(7)→隅田川(5)→ワールドビジネスサテライト(13)→トムラウシ山(7)→松坂桃李(7)
こうしてみると、固有名詞だと7文字が多くなる傾向にある。日本人の人名にそれくらいの長さが多いからだろう。それでは「固有名詞」に代わって、「濁音と半濁音が両方入っている言葉」という制約のあるターンへと移行してみよう。
リンパ腺ガン治療(11)→ウプサラ大学教授(13)→ゆうパック追跡サービス(13)→スーパーカップ超バニラ(13)→ライザップ(5)→プリンスエドワード島(11)→ウーピー・ゴールドバーグ(11)→グレートチキンパワーズ(11)→ズッペッタ(5)→高木心平(7)→インフルエンザ・パンデミック(13)→クックパッドの大好評レシピ(17)→ピンタゾウガメ(7)→メゾピアノ(5)→のっぴきならない事情で(13)→電波(3)→パンダ(3)→脱法ハーブ(7)→ブロッコリーポタージュ(11)
ちなみに言葉の採用基準は「Googleで検索して引っかかるかどうか」。「ゆうパック追跡サービス」「スーパーカップ超バニラ」などの長々しいものから、「メゾピアノ」「電波」「パンダ」といったシンプルで気持ちのいいものまでバラエティ豊かに含まれていて、「音数が素数」+「濁音と半濁音の両方が必須」はなかなか良いお題となったのではないだろうか。シンプルでありながら濁音と半濁音がともに入っている言葉が、特に好みである。しかしその条件を満たしていても、「のっぺらぼう」とか「仏法僧」とか「ナイルパーチの女子会」とか、音数が素数にならないのが惜しい残念なものもあった。「日通のペリカン便」は11音で素数だけど、「ん」で終わるからダメ。実に残念。違うお題のときに使おうとメモしておく。そしてしばらく経ってからメモを見直すと、そこには意味不明な謎の単語があふれている。
「縛り方」一つでゲーム性は変わり、いくらでも盛り上がるものにすることが可能なのがエクストリームしりとり。シンプルにして奥の深い言葉遊びなのだ。