日本の防衛力の強化と拡大は急務である。しかし、その方向性を間違えば、逆に私たち日本国民の首を絞めかねない。

 秋田県秋田市と山口県萩市に、アメリカが開発した「イージス・アショア」(陸上イージス)の配備が予定されている。北朝鮮などの弾道ミサイルを迎撃するための装置だが、総額1兆円を軽く超える予算規模と、政府のずさんな導入計画が波紋を広げている。

イージス艦よりはるかに高額に ©共同通信社

グーグル・アースで“測量”された調査報告書

 今年6月、防衛省が作成した配備候補地の調査報告書に多くのデータの誤りが含まれていることが発覚。本来なら実際に配備候補地で測量をすべきところ、手間を省いてグーグル・アースを用い、しかも縮尺の違いを見落としてデータを算出したため、実際の地形とは全く異なるデータが調査報告書に記載されていたのだ。

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 しかも、地元説明会の席で住民たちを前に居眠りする職員などもおり、住民たちの不安と反感は一挙に高まった。

 だが、ことの本質はそれだけではない。配備強行の裏には、空洞化する日本の防衛がくっきりと透けて見えてくる。

有事には住民を巻き添えに

 防衛問題に詳しいジャーナリスト・南村梟郎氏は、陸上イージスが内包する5つの問題点を指摘する。「敵とのコスト競争の泥沼にはまり込む」「有事の際には住民を巻き添えにする」「経費膨張で日本の防衛力がいびつになる」「自衛隊と米軍への信頼性が低下する」「日本の守りを効果的に高める方法は別にある」というのがそれだ。

 このうち周辺住民が最も懸念するのは、「有事の際に巻き添えになる」という点だろう。

ミサイル実験に余念がない北朝鮮 ©共同通信社

 秋田市西部の候補地である新屋演習場周辺には住宅地が広がり、演習場の数百メートル先には小中学校が点在する。

「自分たちが日本なら陸上イージスなんて配備しない。有事になれば敵に真っ先につぶされるからだ」――南村氏によると、米軍関係者はミサイル防衛について、こう認識しているという。